佐野元春&THE COYOTE BAND、観客を狂喜の渦に叩き込んだツアー最終公演

AI要約

佐野元春&THE COYOTE BANDが2024年8月1日に最終公演を開催

バンドのパワーアップと新曲披露、オーディエンスを熱狂させる

「佐野元春クラシックスの再定義」をテーマに驚きと興奮が続く

佐野元春&THE COYOTE BAND、観客を狂喜の渦に叩き込んだツアー最終公演

佐野元春&THE COYOTE BANDが2024年8月1日(木)、「2024年初夏、Zepp Tourで逢いましょう」の最終公演をKT Zepp Yokohamaで開催した。本公演のオフィシャルレポートを掲載する。

「僕とバンド、パワーアップしてきました。たくさん演奏するんで、楽しんでいってください」。これが、育ち盛りの若手バンドマンによる言葉ならまだわかる。しかし困ったことに、あの佐野元春が、最新ライブツアーのステージ上でさらりと口にした言葉なのである。「2024年初夏、Zepp Tourで逢いましょう」の追加公演。ツアー本公演は全国のZepp7会場で8公演が行われ、追加公演はKT Zepp Yokohamaで再度スケジュールされた。前述の言葉に偽りなくバイタリティに満ち、またチャレンジングな内容でもあったステージの模様を、あらためて振り返ってみたい。

THE COYOTE BANDの面々(深沼元昭/G、藤田顯/G、高桑圭/B、渡辺シュンスケ/Key、小松シゲル/Dr)が位置につき、佐野元春がひときわ大きな喝采に包まれながら姿を見せる。フロアから高らかな指笛も鳴り響く、その熱くもフレンドリーな距離感は、さすがライブハウス、さすがZeppツアーといったところだろう。フロアには椅子が並べられた、いわゆる座席制ライブの体裁にはなっていたけれども、開演と同時にオーディエンスは総立ちになり、目に見える範囲ではそのままバンドと共に約2時間を駆け抜けてしまった。

序盤から、メンバー個々のフレーズがパキッと立った演奏が織り成す、鮮やかなアンサンブルに惚れ惚れとさせられる。それぞれがシーンの第一線で活躍し、バンド結成(きっかけは佐野が、深沼、高桑、小松を迎えたレコーディング・セッションであった)から間もなく20周年を迎えようとしているものの、ただ盤石の演奏を鳴り響かせるわけではない。反復するグルーヴの中から、今にも情感がはみ出しそうなダイナミズムを描き出している。

2曲目には、ツアー開始に先駆けてデジタルリリースされた“ヤングブラッズ(New Recording 2024 ver.)”が披露される。「佐野元春クラシックスの再定義」というコピーと共に届けられたその曲は、オリジナル・バージョンのニュアンスを踏襲しつつ、キーも歌詞の一部も大胆に変貌した、佐野元春 & THE COYOTE BANDによる最新の記録だ。続いては、軽やかなモータウンビートに佐野がタンバリンを振るいながら歌うあの曲が。彼が履きこなすパンツと同じくらいタイトにクリスピーな節回しを決めてゆく“ジュジュ(New Recording 2024 ver.)”である。

ここでギョッとした人は少なくないだろう。かくいう僕も、ライブレポート執筆にあたって送られてきたセットリストを目の当たりにし、仰天した。この曲も最新バージョンが既にレコーディングされているのか? 何しろ今回のライブツアーではこんなふうに、序盤から「佐野元春クラシックスの再定義」が次々と飛び出し、オーディエンスを狂喜の渦に叩き込んでしまうのである。

とりわけ驚かされたのは、藤田による幽玄のギターイントロに導かれた“欲望(New Recording 2024 ver.)”だ。『Dance Expression of The Circle』に収録されていたリミックス“欲望 (Rescue Version)”を、THE COYOTE BANDがあらためて解釈し直したかのような、人力アシッド・ハウスとでも呼ぶべきサウンドが完成している。頭上にはミラーボールが煌めき、歌に込めた情熱とダンスの陶酔感が溶け合ってゆく。さらに“インディビジュアリスト(New Recording 2024 ver.)”に至っては、すわ人力ディスコ・ダブかという斬新なリアレンジで、オリジナル・バージョンとも、THE COYOTE BANDが長らく参照してきた“インディビジュアリスト – H.K.B. session”とも、まるで異なっている。