『南くんが恋人!?』“小さい”八木勇征の愛らしさ 推しを愛でる令和ならではの描写も

AI要約

事故に遭いそうになった南くんが15cmの手のひらサイズになり、ちよみの自宅で秘密の同棲生活が始まる。

南くんの不安や恐怖、ちよみの順応力と喜び、キャラ変した南くんのプライドとちよみとの対等な関係が描かれる。

南くんとちよみの仲直りとキス、周囲の優しさや家族の愉快なやりとりなどから生まれる多幸感が楽しめるハートフルな物語。

『南くんが恋人!?』“小さい”八木勇征の愛らしさ 推しを愛でる令和ならではの描写も

 事故に遭いそうになり、気がついたら15cmの手のひらサイズになってしまった南くん(八木勇征)。誰にも見られたくないと駄々をこねる南くんを、ちよみ(飯沼愛)は仕方なく自宅に連れ帰った。『南くんが恋人!?』(テレビ朝日系)第2話では、ちよみと南くんの秘密の同棲生活が始まる。

 驚くべきはちよみの順応力。過去シリーズの南くんたちは小さくなったちよみにしばらくあたふたしていたが、ちよみは家に帰るや否や、まるでお人形遊びのように甲斐甲斐しく南くんの世話を焼く。不安でいっぱいの南くんをよそに、ちよみは今の状況に戸惑うどころか、「南くん、かわいい!」とむしろ楽しそうだ。

 だが、南くんが小さくなった現場に残された洋服や荷物を取り行った先でちよみはようやく事態の大きさを実感する。その場にしゃがんで南くんの目線になってみたら、世界は危険でいっぱいだった。そんな中でちよみに会いたいという思いで待ち合わせ場所まで来てくれた南くん。南くんへの愛しさが増す一方で、ちよみはついはしゃいでしまったことを反省するのだった。

 でも、ちよみの気持ちもわからなくはない。小さくなった南くんはとにかく愛らしく、母性本能をくすぐる。それが好きな人だったらなおさらだ。推し文化が定着した今の時代、多くの人が推しのアクリルスタンドを所有し、人によっては出かけ先にも連れていく。もしもそれが“本人”だったら、きっとちよみみたいにはしゃいでしまう。そう考えてみると、彼女の反応は現代っ子特有なのかもしれない。

 かたや、小さくなってしまった側の不安や恐怖は普遍的。なぜ小さくなってしまったのか、いつ戻れるかもわからない中で、危険は次々と襲ってくる。ちよみが“悪魔”と呼ぶ弟・拓真(番家天嵩)がおもちゃの銃で放った玉も普通の人間なら当たっても問題はないが、南くんにとっては命取りになりかねない。さらにちよみが学校に行っている間、南くんは楓(木村佳乃)の掃除機にあわや吸い込まれそうになる。気になって学校を早退したちよみが帰宅すると、南くんは体操座りで小さく丸まったまま部屋のすみっこに隠れていた。

 この第2話で印象的だったのは、南くんのキャラ変だ。初回の放送では完璧な理想の彼氏だった南くんは身体が小さくなってしまった不安から、余裕がなくなり、子供っぽくなっている。ちよみに対しても「あんまり男に向かって小さい小さいって何度も言うな!」とプライドをむき出しにする南くん。ちよみが眠っている時は「大きくてもかわいい」と思っていたのに、腹たちまぎれに「『ゴジラ』とか、『進撃の巨人』みたい」と言ってしまい、プチ喧嘩になってしまう。

 だけど、ちよみにはそれが嬉しかった。南くんの方が年上で、喧嘩の時も自分が怒ってばかり。それが今は南くんも本音でぶつかってくれる。ちよみはようやく南くんと対等になれた気がしたのだろう。大変な状況下でも、「神様が素敵な時間をプレゼントしてくれたのかもしれない」と思えるちよみは大人だ。飯沼が演じるちよみは年相応のキュートさもありながら、どこか頼もしい。男女の立場が逆転しても、そこは歴代のちよみたちと共通している。

 最後は無事に仲直りし、デートに出かけた先でキスをするちよみと南くん。何やら怪しい動きを見せるちよみを疑ってかかるより、まず心配する大人たちも優しさに溢れていて、本作にしか味わえない多幸感がある。父の信太郎(武田真治)が幸せを感じる堀切家の家族団らんや、祖母の百合子(加賀まりこ)と手芸店・チャコ(室井滋)の井戸端会議など、ストーリーとは一切関係ないところで交わされる人と人のやりとりもこのドラマの見どころだ。ハートフルで毎週火曜日はいい気分で眠れそう。

 そんな中で唯一不機嫌な人物が、南くんの大学バスケ部のコーチ・佐川美鈴(武田玲奈)。南くんが突然行方をくらませたことで、目をつけられたちよみは彼女にどう対峙するのだろうか。