山田涼介の“愛嬌”演技が冴える『ビリオン×スクール』 歴代学園ドラマとは異なる「令和時代感じさせる構成」識者が解説

AI要約

Hey! Say! JUMPの山田涼介が主演を務めるフジテレビ系連続ドラマ『ビリオン×スクール』は、財閥系企業のトップである主人公・加賀美零が学校の教師として身分を隠し、生徒とともに成長していく姿を描く学園コメディー。

山田涼介が斬新な“S教師”を演じ、愛くるしいキャラクターとコミカルなギャップを見事に表現している。

役者力を発揮した山田涼介が、大人げないボケと秘書のツッコミ、おかしくも温かい関係を通して視聴者を魅了している。

山田涼介の“愛嬌”演技が冴える『ビリオン×スクール』 歴代学園ドラマとは異なる「令和時代感じさせる構成」識者が解説

 Hey! Say! JUMPの山田涼介が主演を務めるフジテレビ系連続ドラマ『ビリオン×スクール』(毎週金曜 後9:00)は、財閥系企業のトップであり“億万長者=ビリオネア”である主人公・加賀美零が、身分を隠して学校の教師となり、さまざまな問題に直面しながらも生徒とともに成長していく姿を描く学園コメディー。クセの強い主人公のキャラクターを山田がコミカルに演じている。定番に見える学園ドラマだが「令和らしさ」も盛り込まれているという同作について、ポップカルチャー研究者の柿谷浩一氏(早稲田大学招聘研究員)に解説してもらった。

■「斬新な“S教師”×コミカル」見事な調和を見せる山田涼介の演技

 愛くるしいキュートな言動、ユーモアの瞬発力にも長けた山田涼介。そんな役者力を発揮した今作。大企業のCEOという素性を隠し、問題クラスの担任教師となる加賀美。スーツをビシッと決め、手をポケットに入れ、座るときはスラリとした脚を組む。アイドルの威光をたっぷり滲ませた、端麗な立ち振る舞いが冴えわたる。

 相手を「お前」呼びする、上から目線の“ドS”ぶりもサマになっている。設定的にはキザやナルシストになるところだが、不思議と彼には変な“尖り”がない。トレードマークの相手へ向ける指差しもなぜか憎めない。身勝手で傲慢だけど、妙にスマートな心地よさをまとう斬新な“S”な教師。それを〈存在から清廉で上品なオーラを強烈に放つ〉持ち前の個性で好演して見事だ。

 そんなスタイリッシュな彼が、随所でみせるコミカルなギャップも見所。自分のカリスマ性を表現して、頭を手でカポっと掴みかかる仕草。満点合格と言って、頭上で大きな丸を両手で作る。折々のポーズが超絶にダサく、でも愛嬌たっぷりで、やみつきの笑いを誘う。

 他にもガッツポーズや高笑いをした両腕開き、相手を煽る指立て…どの身ぶりも本気でやって全力感にあふれる。恥や外聞もなく、声を張って身体全体を使った真剣な素のボケ具合。それが「無邪気な少年」のようで愛おしく、同時に子どものまま大きくなった「お坊ちゃん」感も醸してうまい。単に笑えるのでなく、バカバカしい一面も許して見守りたくなる“愛されキャラ”がしっかり感じられて魅力的だ。

 この大人げないボケに、秘書兼ボディーガード/副担任の一花(木南晴夏)がツッコミを入れる。そのコントさながらの光景もじつに愉快。毎度、加賀美の奇抜な言動にクスりともせず、すまし顔で冷ややかな指摘をなげる。それに彼がムキになる。周囲を置き去りにヒートアップする「素のボケ⇔冷静なツッコミ⇔意地のはり」。この応酬が痴話喧嘩っぽくて仲むつまじく、ほっこりする。彼女が「両頬をムニっ」と掴んだり、「頭をグリグリ」したり、直にじゃれ合うのもいい。

 彼の暴走発言を制止するときも、彼女は手で口を無理やり塞ぐ。その話せなくなってモニョモニョする姿も可愛くおかしい。いつも偉ぶる主を、目下の使いが暴れ馬をなだめ、飼いならすような逆転ぶり。そして彼女に反抗したり怒ったりすることなく「かないません」感満載の従順な姿が、何とも滑稽。質感のよい“S”ぶり×コント顔負けのコミカルさが、うまくブレンドされた仕上がりだ。