『降り積もれ孤独な死よ』リッカのマークが意味するもの “蒼佑”萩原利久が抱えていた闇

AI要約

地下室で見つかった13体の子どもの遺体。灰川十三が自供し、事件が解決に向かいかける中、花音が襲われてその事件の犯人はまだ捕まっていないことが明らかになる。

紋様のマークから事件の鍵が見つかり、生き残った子どもたちの証言や謎めいた男の姿が浮かび上がる。主人公の関わりや家族の関係性が混沌としていて、真相解明がますます困難になっている。

サスペンス要素強い作品でありながら、家族や暴力の連鎖といったテーマも取り上げられており、登場人物たちの心理描写が際立つ。まだ見ぬ深い闇が待ち受けている。

『降り積もれ孤独な死よ』リッカのマークが意味するもの “蒼佑”萩原利久が抱えていた闇

 地下室で見つかった13体の子どもの遺体。家の主である灰川十三(小日向文世)の行方を県警は追っていたが、身近なところから謎が明らかになった。

 『降り積もれ孤独な死よ』(読売テレビ・日本テレビ系)第2話は、ドラマ序盤ながら成田凌演じる主人公・冴木迅の今後に波及しそうな衝撃の展開だった。警察に身柄を拘束された灰川は「子どもたちは全員俺が殺した」と殺人を自供した。灰川は何がしたかったのか。動機不明のまま、謎めいた事件はあっけなく幕引きとなった。

 その直後、花音(吉川愛)が何者かに階段から突き落とされる事件が発生する。幸い命に別状はなかったが、花音は、自分を襲った犯人は灰川邸事件の犯人で、狙われたのは「犯行が続いているという何よりの証拠」だと自身の考えを語った。灰川が勾留中であることを考慮すると、灰川邸事件の犯人は別にいることになる。

 異なる事件の鍵を握るのは特徴的な紋様だった。「リッカのマーク」と花音が呼ぶマークは地下室の壁に残されたものと同じで、灰川の手のひらにも同じ文様がある。花音によると、灰川は同マークを「家族の証」と語っていた。灰川と共同生活を送っていた“家族”の誰かが、死体遺棄事件に関わっていると考えられた。

 生き残った6人の子どものうち消息不明の神代(杢代和人)を除いた全員が、灰川が犯人であることを否定していた。川口悟(松本怜生)、沖島マヤ(仲万美)、東優磨(カカロニ栗谷)は、それぞれの人生を生きており、事件とのつながりは見えない。冴木が次に向かったのは、義理の弟である瀧本蒼佑(萩原利久)だった。蒼佑の母・由香(仙道敦子)は、犯行時刻に蒼佑は自宅にいたと答える。

 真実は別の経路から明らかになる。連続傷害事件の被害者はDVの加害者であり、犯人は子どもを虐待する男を憎んでいる人物。それを知った冴木が向かった先は……。

 「家族は家族を守るために嘘をつくこともある」

 愛情と嘘が絡まり合い、複雑で入り組んだ謎を生み出すこと。DVのサバイバーである蒼佑が加害側になって、犯罪に手を染めてしまうのは暴力の連鎖を感じさせて痛ましい。屈託のない青年が自身の内なる“闇”に抗いきれず、復讐の念に駆られていたに違いない。鋭利な先端を持つ青年期特有の振れ幅を、萩原利久は繊細に表現していた。

 灰川邸事件の犯人が蒼佑であると決まったわけではない。リッカのマークにゆかりのある人物で虐待を受けた経験があるのは蒼佑に限られない。事実、劇中では顔に傷跡のある男性と思しき人物が映されており、事件への関与がほのめかされる。狙われた花音の周辺人物を当たる必要もあるだろう。

 サスペンス調の本作は、広い意味で家族を描く作品と言える。第2話ではとりわけその特質が浮き彫りになった。主人公の冴木自身が事件の関係者と密接なかかわりがあり、虐待家庭の出身であることは灰川邸事件の真相解明にどんな影響を及ぼすだろうか。終盤では、五味(黒木メイサ)が防犯カメラの映像を見て驚くシーンがあり、ラストでは全てを知る灰川の退場も示唆された。ドラマの中の現実は混迷の度合いを深めており、さらなる深い闇が待ち受けていると予想する。