好評の『光る君へ』…新たな視聴者獲得の秘訣は「政争とメロドラマの二重構造」”韓流ドラマ”的演出

AI要約

初回の平均視聴率が12.7%という、NHK大河ドラマ史上最低を記録した『光る君へ』。期待されていなかったが、ドラマ自体は評価が高く、視聴率も上昇傾向にある。

物語の舞台は平安時代だが、不穏な出来事や政権内の陰謀でサスペンス要素があり、新たな視聴者を惹き付けている。女性の恋愛模様も多く描かれ、若い女性層からの支持も獲得している。

日本内外で人気のある韓流ドラマの要素も取り入れられており、宮廷内の陰謀や権力争い、主人公の成長物語などが描かれている。伝統的な大河ドラマとは一線を画す作品である。

好評の『光る君へ』…新たな視聴者獲得の秘訣は「政争とメロドラマの二重構造」”韓流ドラマ”的演出

初回の平均視聴率が12.7%という、NHK大河ドラマ史上最低を記録した『光る君へ』。同ドラマの制作発表があったとき大河ドラマファンの多くは、期待を寄せなかったという。

「大河ドラマのほとんどが歴史劇です。中でもファンが好むのが激動の時代と“戦”です。ですから戦国時代や幕末を描いた作品はどれも高い視聴率を稼いでいます。激動のイメージがあまりない平安時代と主人公が女流歌人では数字は取れないだろうといった声も少なくありませんでした」(テレビ誌ライター)

しかし、放送から半年が過ぎ、ドラマ自体の評価は決して悪くない。事実、視聴率は回を重ねるごとにジワジワと上がってきている。その理由について、前出のライターは、

「これまでの大河とはテイストが異なる新しいドラマになっていて、気がついたら引き込まれていたと感じる視聴者は多く、これまで大河を見てこなかった新しい視聴者の獲得に成功しているといえます」

と、分析している。

「物語の舞台が平安時代とはいえ、放送初期のころから、さまざまな“乱”が勃発しています。都で天然痘が流行したり、貴族間の諍いで起きた『長徳の変』など、不穏な出来事がしっかり描かれている。さらに、当時の政権内で起きていた陰謀渦巻くドロドロした権力闘争が、『光る~』ではドラマチックに描かれていて、決して単なる伝記ドラマでなく、もはやサスペンスドラマの仕上がりになっているのです」

それだけではない。登場人物、とりわけ女性たちの恋愛模様が描かれていて、ラブシーンが多いのもこれまでの大河とは大きな違いだ。そのため、既存の大河ファンだけでなく、若い女性の視聴者が増えているという。主人公の紫式部こと「まひろ」のキスシーンで女性視聴者が爆増したという報道もあったくらいだ。

「まるで韓流ドラマを見ているよう」

と分析するのは韓流ドラマウォッチャーの芸能レポーターだ。

「現代劇だけでなく、時代モノでの韓流ドラマで人気があるのは、このパターンのドラマです。朝廷を舞台にした時代劇という点では『宮廷女官チャングムの誓い』がすぐ頭に浮かびました」

『宮廷女官チャングムの誓い』は’03年に韓国MBCで放送され、連日視聴率50%を獲得したドラマだ。日本でも放送され、人気を博した。

宮廷内の陰謀に巻き込まれ忙殺された宮女(女官)の娘が、自分も女官となり母の無念を晴らすため宮廷に上がるのだが、同様に陰謀に巻き込まれ、一度は奴婢に身分を落とす。だが、やがて医女となり宮廷に復帰。最後は国王の主治医となるサクセスストーリーだ。

「女官同士の争いや、朝廷内部で繰り広げられる権力争いに主人公のロマンスも加味され、毎回ハラハラドキドキの連続でした。毒殺シーンなどもあって犯人捜しのミステリー的要素もありました。『光る~』でも、同様のハラハラ要素がたっぷりありますよね」(前出・芸能レポーター)

NHK内部でも、当初は視聴率に関してそれほど期待値が高かったわけではないが、今では、

「大河ヒットの新たな法則を手に入れた」

と盛り上がっているとか。

サスペンス&バイオレンス&ラブ・ロマンスと、高視聴率獲得の必須条件がそろった『光る君へ』。ますます見逃せなくなったーー。