東北の果樹産地、外国人材が支える 人材不足解消へ導入広がる<リポート2024>

AI要約

東北の果樹産地で外国人材活用が活発化。山形県の農園ではリレー派遣を利用し、青森県の農園では通年雇用も導入。

安達農園ではインドネシアの特定技能実習生を受け入れ。津軽農園ではフィリピン人特定技能実習生が通年雇用され、リーダー的な存在に。

地域や果樹種により外国人材活用の取り組みにばらつきがあり、支援の必要性が訴えられている。

東北の果樹産地、外国人材が支える 人材不足解消へ導入広がる<リポート2024>

 東北の果樹産地で、人手不足を解消しようと外国人材を活用する動きが活発化している。サクランボの生産量日本一を誇る山形県の農園は農繁期の派遣制度を利用。青森県のリンゴの栽培現場では、通年雇用する事例もある。安定的な人材確保に向け、技術指導や費用面といった課題も見えてきた。(山形総局・奥島ひかる)

■リレー派遣や通年雇用活用

 サクランボ収穫が最盛期を迎えた6月中旬、山形県東根市の「安達農園」。地元の従業員と共に、インドネシアの特定技能実習生2人が佐藤錦を摘み取った。

 アフマド・ハビブ・ムストファさん(28)は母国で農産物販売業を起こすのが目標。「お金をため、文化も勉強したい」と意気込む。

 2人とも長崎県の人材派遣会社の社員で、6、7月滞在する。同社は農繁期に合わせて各地に人材を送るリレー派遣に取り組む。山形県は今年、同様の派遣制度を利用する生産者に助成金を交付しており、果樹や野菜の農園など10カ所が計18人を受け入れる予定だ。

 安達農園は従業員の高齢化で作業に遅れが出ることもあり、数年前から外国人材の活用を考えていた。熊沢儀行社長(42)は「リレー派遣は忙しい時期に助かるし、雇用を試すにはぴったりの仕組み」と話す。

 ただ、毎年同じ働き手が来る保証はなく、多忙な時期に一から指導する手間も生じる。熊沢社長は「安定した戦力の獲得のため、いずれは通年の雇用が望ましい」として、冬場も作業がある作物の栽培を視野に入れる。

 青森県弘前市でリンゴや桃を栽培する「津軽農園」は昨年から通年雇用を導入。採用したフィリピンの特定技能実習生ミランダ・エマヌエル・ラスカノさん(36)は、わずか1年でリーダー的な存在に成長。長期の就労を望み、必要な資格取得に向けて勉強中だ。

 農業の外国人材が東北最多の青森県だが、果樹ではリンゴの選果場など比較的大規模な事業所が中心。栽培現場での事例は珍しい。同園には元々地元在住のフィリピン出身者がおり、円滑な受け入れに役立った。

 棟方健二社長(48)は「若くて責任感のある人材を新たに獲得できる意義は大きい」と手応えを語る。

 一方で、住まいの手配や仲介団体への手数料、発生する事務作業の負担は想像以上に大きいと感じている。周辺の果樹園は小規模な経営体が多く、外国人材活用の拡大には懐疑的だ。

 「一農家が取り入れるにはまだまだ障壁が高い。もっとサポートがなければ広がらない」と棟方社長。行政による手続きや金銭面での支援の必要性を訴える。

■地域や分野でばらつきも

 農業における外国人材の活用は東北で活発化する一方、地域や分野によるばらつきも見られる。

 6県の各労働局のまとめによると、2023年10月時点の労働者数は1798人。前年同時期(1463人)より約2割伸びた。青森(558人)や岩手(504人)が目立ち、山形(79人)や秋田(76人)のように100人に満たない県もある。福島は338人、宮城は243人だった。

 分野別の内訳は明らかにされていないが、山形県内の農業法人に昨年12月時点で県が行った実態調査(303社、回答率46%)によると、受け入れ中の外国人53人のうち、畜産が最多の55%。果樹は1人だった。

 山形県の担当者は「果樹は繁忙期が比較的短い。特に山形のような降雪が多い日本海側では冬に作業できないことが要因ではないか」と分析する。