営業マンからクジラ専門店店主に 縄文時代から続く日本の食文化を次の世代へ

AI要約

板花さんはクジラ肉に魅了され、捕鯨船に乗り込む決意をする。

クジラの栄養価の高さや友人の話から、クジラ肉専門のお肉屋を開業したいと思うようになる。

妻の反対を押し切り、32歳で捕鯨船に乗り込んだ板花さんが南極付近でミンククジラを捕獲する。

営業マンからクジラ専門店店主に 縄文時代から続く日本の食文化を次の世代へ

それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

5月下旬、新しい捕鯨母船「関鯨丸」が、初めての操業に向けて、出航したというニュースがありました。そのニュースに、「ああ、クジラ、食べたいなぁ」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。

多摩地域の西部、東京都あきる野市。東京サマーランドがある場所で知られていますが、板花貴豊さん(41)は、ここで生まれ育ち、大学を卒業後は、薬品関係の会社で営業マンとして働いてきました。

板花さんには、幼稚園からの親友がいて、二人ともお酒が大好き!

ある日、その友人が「これ、食べみて」と酒の肴を持ってきたんです。

「何、この肉?」、黒い肉の塊を見て首を傾げる板花さん。

「クジラ肉だよ」

「え、これがクジラなんだ!」

板花さんが初めてクジラを食べたのは22歳、その美味しさにハマります。

「クジラは旨いだけではなく、栄養がとても豊富なんだよ」という友人の話によると、クジラは、高タンパク・高鉄分・低カロリー・天然コラーゲンもたっぷり。哺乳類なのに、青魚のDHAやEPA、さらに海の哺乳類に特有のDPAといった「必須脂肪酸」を豊富に含んでいます。数千キロを泳ぎ続けるクジラは、体内に「バレニン」という疲労回復成分も多くて、まさにスーパーフード。

なぜ、その友人がクジラについて詳しいのか?

実は、捕鯨会社「共同船舶」に就職したからなのです。新しい捕鯨母船「関鯨丸」は「共同船舶」の所有です。

飲んで食べて語り合ううちに、クジラに魅せられてしまった板花さんは、「クジラ肉専門のお肉屋さんを開きたい」と思うようになります。そのためにも捕鯨船の乗組員になって、クジラを捕ることから始めるほうがいい、その思いを妻に打ち明けると、「あなた、うちに何人の子供がいると思っているのよ!」と言われてしまいました。

当時、板花さんには幼い子供が3人いました。

大反対する妻を、「食糧危機、環境危機を救うために、そして子供たちの未来のためにも、クジラを食べる食文化を広めたいんだ」と説得して、捕鯨母船「日新丸」に乗り込んだのは、32歳の時でした。

板花さんが捕鯨船に乗って向かった先は、南極近くの南氷洋。流氷が浮かぶ海で、体長7mほどのミンククジラを捕りました。母船に引き上げられたクジラは、甲板で解体され、それぞれの部位に分けられて冷凍保存されます。