【漫画家に聞く】過剰な広告が人々に与える影響とは……? 昭和レトロな『広告飽和点』の普遍的なメッセージ

AI要約

『広告飽和点』は、広告による影響を風刺的に描いた創作漫画で、2007年に制作された作品だ。公共施設のネーミングライツを元ネタにしており、戦前の日本を舞台に現代でも通じる風刺が効いている。

作者の高川ヨ志ノリさんは、古さを感じさせない普遍的なメッセージを持つ作品を生み出す。シュールなアイデアと毒気が絶妙に組み合わさり、作品の舞台設定や商品概要には独創性が光る。

現代にもマッチした作品であり、美容系広告の疑似科学ネタは時代を超えて魅力的である。作者の今後の目標として商業単行本の継続出版や個人作品の制作を挙げている。

【漫画家に聞く】過剰な広告が人々に与える影響とは……? 昭和レトロな『広告飽和点』の普遍的なメッセージ

 人が「広告」から受ける影響は計り知れない。戦前の日本を思わせる世界観のなか、巷に溢れるキーワードとゲシュタルト崩壊を描いた創作漫画『広告飽和点』は、そんな「広告」のあり方を風刺的に描いた力作だ。2007年に制作された作品だそうだが、普遍的なメッセージを湛えており、古さを感じさせない。

 本作を手掛けたのは、高校生の時にシュール系の4コマ漫画から創作を始めたという高川ヨ志ノリさん(@hiyokoblack)。シュールさと毒気、知的好奇心を刺激するアイデアが絶妙に混ざり合った本作がどのように生まれたのか、話を聞いた。(望月悠木)

■元ネタは“公共施設のネーミングライツ”

――後乗りで広告展開する企業、「広告を多く出していることに安心感を覚える国民など、現代でも通じる風刺が効いている内容でした。

高川:本作の元ネタは“公共施設のネーミングライツ”です。「耳馴染みによる疑似好印象の関係というのはどこかで破綻するのでは?」と漠然と思って描きました。ただ、各自お好きなポイントで何かしら感じてもらえると嬉しいです。

――昭和初期~中期ごろが舞台になっていますが、なぜこの時代を選んだのですか?

高川:「戦前っぽい雰囲気で妙に未来的なモチーフを描くと、架空の日本のような平行世界感が出ていいな」と思いました。使い勝手のいい舞台なので実は割とよく使う手法です。

――作中に登場する「モノポール·グラマラスS」の商品概要はどのように考えたのですか?

高川:常に光速以上の速さを持つとされる仮想の粒子“タキオン”の疑似科学グッズがちょくちょく売られており、「理論上存在するものの未発見の粒子が疑似科学グッズとしてカジュアルに製品化されている」ということに面白さを覚えていました。そこから「自分が詐欺師として作るとしたら何が良いか?どう製品化するか?」と考えていった結果、「モノポール·グラマラスS」が生まれました。

――「然し」「其れ」など現代ではあまり使われない表現が多く出てきますが、セリフを決めていくうえで注意したことは多いのでは?

高川:戦前世代の小説をよく読んでいたので、特に迷いもなくセリフを決めていきました。

――本作は2007年に制作された作品とのことですが、今現在読み返してみてどうですか?

高川:広告部分の書体の使い方を見て、「あの当時の自分の中の流行りだな~」と感じました。

――最近ではネット上に怪しげな美容系広告が散見されます。2007年作成ではあるものの今の時代にマッチした作品になっていますね。

高川:昔も今も美容系広告は疑似科学ネタの宝庫なので、この先もずっと時代にマッチしていくと思います。

――今後の漫画家としての目標など教えてください。

高川:割といい年なのですが、この歳になってまさかの初商業単行本『怪奇古物商マヨイギ』1巻( KADOKAWA)が6月26日に出ました。とりあえず2巻以降もリリースできることが当面の目標です。本作は『カドコミ』で無料試し読みができるのでぜひ。また、個人で作成している『ワラジ虫観察漫画』なども少しずつ進めていきたいです。