ピアニストのトリスターノが自主レーベル設立…未来へ託したバッハ録音、現在映し出す表現模索

AI要約

フランチェスコ・トリスターノは、ジャンルを超えた活躍を続けるピアニストであり、自主レーベルを設立して自由な音楽活動を展開している。

彼のレーベルからリリースされたバッハの組曲では、未来への想いを込めた独自のアプローチで演奏されている。

彼はクラシックの本流を学びながら現代曲やテクノを好んで演奏し、常に新しい可能性を探求している。

 バロックからテクノまでジャンルを超えた活躍を続ける、1981年ルクセンブルク生まれのピアニスト、フランチェスコ・トリスターノ。自主レーベルを設立して「いま、ここにある」音楽をめざす意図を聞いた。(松本良一)

 メジャーレーベルと独占契約を結んでいたが、昨年、自らのレーベル「intothefuture」(発売はキングインターナショナル)で新たな一歩を踏み出した。「長年の夢がかなってうれしい。自分の活動を展開する上で完全な自由がほしかった」と話す。

 第1弾のバッハ「イギリス組曲」全曲に続き、バッハの「フランス組曲」全曲も発売された。早めのテンポ、軽快なタッチで疾走するかのような演奏。しかし、「未来へ」とうたったレーベルで、なぜバッハを?

 「バッハは自らの音楽を『未来へ』託した人だと思っています。だから過去の音楽ではありません」

 バッハは「人生の伴侶」と言う。二つの全6曲の組曲には特別な思い入れがあり、それには舞曲であることも関係している。

 「ダンスミュージックには特有のリズムがあり、時代を超えた普遍性がある。バロック音楽を演奏する時は歴史をひもとく必要がありますが、想像力も欠かせない」

 クラシックの本流を学びながら、現代曲を好んで弾く。さらにクラブミュージックを愛し、テクノのソロアルバムもある。もちろん自作も。

 「音楽は常に演奏者と共にあり、現在を映し出すもの。その表現に正解はない。いかに説得力のある音を作り出すか、常に新しい可能性を探っています」

 7月3日午後7時から東京・銀座のヤマハホールで「Piano 2.0」と題し、ルネサンスの音楽と自作などを組み合わせたユニークなリサイタルを開く。問い合わせは(電)03・3572・3171。

 また、6日に横浜・青葉台のフィリアホール((電)045・982・9999)でバッハ、フレスコバルディ、ストラビンスキーと自作、7日に東京・三鷹の三鷹市芸術文化センター((電)0422・47・5122)でバッハ、ラベルと自作によるリサイタルがある。共に午後2時開演。