堀家一希、『虎に翼』梅子の次男・徹次はハマり役の予感 葛藤を抱えたまなざしの“巧さ”

AI要約

第13週で、NHK連続テレビ小説『虎に翼』の物語が戦後に移り、大庭梅子の次男・大庭徹次が登場。徹次は戦地で負傷し、復員後は酒に溺れひねくれていることが明らかになる。

堀家一希が演じる徹次は、『虎に翼』でのキャラクターの内面を表現することに定評があり、役柄に深みを与えている。

堀家一希は『イチケイのカラス』や映画『世界は僕らに気づかない』など様々な作品で高い演技力を披露し、注目を集めている。

堀家一希、『虎に翼』梅子の次男・徹次はハマり役の予感 葛藤を抱えたまなざしの“巧さ”

 毎週毎日各所で話題になり、大きな反響を呼んでいるNHK連続テレビ小説『虎に翼』。物語は戦後へ移り、寅子(伊藤沙莉)が東京家庭裁判所で働き始め、共に学んだ学生時代の友人にも少しずつ再会を果たしているが、まだ再会できていない友人の中で、大勢の視聴者が気にかけている人がいた。

 高圧的で妻をバカにし、愛人の元に入り浸りの夫と離婚し、三男の親権だけでも取りたいと願っていた大庭梅子(平岩紙)は無事で元気なのか。「長男はもう無理かもしれない、でもせめて次男と三男は、絶対に夫のような人間にしたくないの」と願っていた、梅子の次男と三男は、願い通り成長したのか?

 第13週で、その答えが明かされた。

 公開された資料によると、次男の徹次は出征したが戦地で負傷し、復員後は何年も働かずに大庭家に甘えていて、酒に溺れひねくれているらしい。

 第61話でついに、成長した大庭家の次男と三男が登場したが、長男と三男は身なりをピシッとしているが、徹次だけは髪はラフで背を丸め、体も不自由な様子でうらぶれた雰囲気を放っている。

 その梅子の成長した次男・大庭徹次を演じているのが堀家一希だ。彼が演じるのだから、徹次の苦しみや葛藤、辛さが胸に迫るようなキャラクターとなるに違いない。

 なぜなら堀家一希のひたむきなまなざしは、見ている者の胸にキャラクターの気持ちをありありとぶつけてくるからだ。

 彼が過去に演じた役でよく知られているのは、映画『東京リベンジャーズ』シリーズの林田春樹、通称“パーちん”。東京卍會の旗揚げメンバーのひとりで、熱くなりやすくて喧嘩っ早く、そのおかげで1にも2にも敵対するチームにボコボコにされる場面が多かった。

 パーちんを演じるために体重を15kg近くも増やし(膨大に食べ、さらに筋トレもするという過酷な状況だったらしい)、両サイドを刈り上げたヘアスタイルで、原作ファンも納得のビジュアルを完璧に作り上げた。(※1)パーちんでない時の本人のビジュアルや、朝ドラでの彼を見たら、同一人物だと気づかない人もいるかもしれない。

 ただビジュアル面を寄せるだけでなく、堀家一希はキャラクターの内面の葛藤や喜びを伝えられる俳優だ。やられてもやられても向かっていくパーちんの折れない心が、彼の視線から伝わってきた。

 堀家一希は現在26歳。『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日系)や『ネメシス』(日本テレビ系)、『イチケイのカラス』(フジテレビ系)など、人気ドラマへのゲスト出演も多いが、『君と世界が終わる日に』(日本テレビ系)で演じた、主人公たちと敵対する生き残った自衛官・沢健太郎役で強い印象を残した。

 また2017年のドラマ、『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(カンテレ・フジテレビ系)第3話にゲスト出演した際の、テロ組織に利用され、議員の襲撃に手を染めてしまう若者・藤崎正一という役は特に忘れがたい。

 父親の仇を討ちたいがあまり兄弟でテロ事件に加担し、壮絶な最期を迎えるこの役は、たった1話だけのゲストながら筆者も今も記憶しているほど強烈だった。

 彼が20歳のときの役で、ガンアクションがあり、さらに鍛え上げている小栗旬と西島秀俊とのアクションシーンもあるなど、プレッシャーの大きい役だったと思うが(実際緊張したり、クライマックスでは精神的にも追い詰められたらしい)、思いつめた表情は、純粋がゆえに極端な行動に走る若者そのものだった。(※2)

 そして2023年の映画『世界は僕らに気づかない』の主役・純悟役で初主演を果たし、演技力の高さを知らしめた。

 純悟は母親がフィリピン人で、父親は日本人だけれど物語の中盤以降まではどこの誰だかわからない。さらに純悟はゲイのため、幼い頃からいじめを受けたり、周囲にいまひとつなじめない。恋人はいるが関係がうまくいかなくなってきていて、未来に希望を持てず投げやりになっている。

 ……と、実際は日本人で、本人いわく優しい両親に育てられてきたという、素の堀家一希とは大きくかけ離れた環境にいる役のはずだが、純悟の説得力は信じられないくらい高かった。

 純悟役は当て書きであり、10代特有のいら立ちや煩悶はもちろん、自分の生い立ちとゲイだというマイノリティーとしての引け目、恋人に去られ、母親は勝手に再婚話を進め、どこにも出口がないように思える閉塞感の中で、泣き出し叫び出してしまう気持ちが、表情からもまなざしからも伝わってきた。

 この作品は、2022年の大阪アジアン映画祭で“来るべき才能賞”を、東京フィルメックス新人監督賞では準グランプリを獲得。他にも国内外の多くの映画祭で高い評価を得たが、監督の手腕はもちろんだが、堀家一希の演技のすばらしさが大きく貢献したことは間違いない。

 そんな彼の朝ドラ初出演。生きる気力をなくしている大庭徹次を彼がどう演じるのか、期待しかない。

参考

※1. http://www.cinema-life.net/interview/i2112/

※2. https://deview.co.jp/News?am_article_id=2089767