スマホの音声で観光ガイド…10月末まで奈良・3エリア実証実験を展開中

AI要約

奈良観光を楽しむためのスマートフォンウェブアプリ「おともたび」が登場し、県内3エリアで周遊イベント「カタルナラ×メグルナラ」が展開されている。

ウェブアプリは、観光スポットの音声解説を提供し、地元の観光協会やガイドの情報を活用して観光客の満足度向上を図っている。

イベントの目的は奈良の様々な魅力を紹介し、観光客と地元ガイドの交流を促進すること。英語や中国語にも対応を広げている。

 地元ガイドに案内されているような感覚で奈良観光を楽しんでもらおうと、一般社団法人「関西イノベーションセンター」(大阪市)などは、スマートフォンで手軽に観光スポットの解説が聞けるウェブアプリを使い、県内3エリアで周遊イベント「カタルナラ×メグルナラ」を展開している。10月末まで実証実験を行い、効果を検証する。(河部啓介)

 <正面の池をご覧ください。猿沢池と呼ばれ、今では奈良公園のシンボルにもなっています>。カフェや土産物店に観光客がひしめく奈良市の猿沢池に近づくと、スマホから自動で音声が流れた。<最近では水質改善が進んで水が澄みはじめ、冬には池の底を見ることもできるようになりました>。ちょっとした豆知識も教えてくれる。

 ウェブアプリは、音声を活用した観光事業を展開する「Otono」(静岡市)が提供する「おともたび」。インターネット上で無料登録すると、位置情報と連動して説明の音声が流れる。「奈良公園エリア」では、東大寺南大門や修理中の興福寺五重塔、鹿の情報なども聞くことができる。

 ナレーションには、地元の観光協会やラジオパーソナリティー、観光ガイドらが協力。ガイドブックだけでは味わい尽くせない「地元を知る人ならでは」の情報を吹き込むことで、満足度の向上を図っている。

 「カタルナラ――」のイベントは、県から同法人に出向しているアシスタントマネージャー、松谷一輝さん(29)が企画。地元ガイドと観光客がもっと関わり、奈良の潜在的な魅力を伝える機会を増やすため、橋渡しになるツールになることを目指している。三菱UFJ銀行などが運営する観光ビジネス創出拠点「MUIC Kansai」のプログラムにも採択された。

 ウェブアプリでは、奈良公園とならまちエリア(奈良市)のほか、江戸時代の風情が残る今井町エリア(橿原市)や飛鳥エリア(明日香村)の3市村を対象にした。昨年、県内を訪れた日本人の約4割、訪日外国人の約9割が、奈良公園周辺に行き先が偏っていたことに衝撃を受けたことが背景にあるという。

 松谷さんは「県内での滞在時間を長くして、広いエリアで周遊したり、宿泊したりするきっかけにつなげたい」と意気込む。

 6月末には奈良公園とならまちエリアで、英語と中国語の対応も始める予定。各スポットを訪れてポイントを集めると、オリジナルグッズと交換できる。松谷さんは「知られざる魅力を再発見できるエリアが、多くあることを感じてほしい」と願っている。