イタリアで20年前に出版されたお仕事絵本が日本に……ロシア・アバンギャルドの雰囲気もあるスタイリッシュさが評判に

AI要約

モダンでスタイリッシュな絵で様々な職業の人々と道具を描いた絵本が初邦訳された

子どもがなぞときとして遊べる内容でありながら、ロシア・アヴァンギャルドの雰囲気も漂うアート作品

イラストレーターが自ら手書きとデジタル技術を駆使して制作し、力が抜けて描くことを楽しんでいる

働く人々 かっこいい絵で

 たくさんの道具とそれを使う様々な職業の人を、モダンでスタイリッシュに描く。2005年のボローニャ国際絵本原画展入選作品をもとに、現地のイタリアでおよそ20年前に出版された絵本が初めて邦訳された。

 のこぎりやかなづち、くぎ。仕事の道具が登場し、<このどうぐ、つかうのは だれ?〉と問いかける。子どもがなぞときとして遊ぶことができる。一方で、20世紀前半の前衛芸術運動「ロシア・アヴァンギャルド」の雰囲気もまとい、アート作品として大人も楽しめるものになっている。

 一つ一つの素材を手書きしたうえで、デジタル技術で合成して制作した。「この時の勢いで描いている。いいもの作ってんなあ」。少しおどけて、自画自賛をする。

 1968年、愛知県生まれ。実家は明治時代から続く書店で、本に囲まれて育った。「ずっと絵が好きだった」。大阪芸術大に進学し、版画を専攻した。卒業後は、イラストレーターとして活躍するかたわら、絵本制作を手がけてきた。

 自らの子育て経験も反映した2005年の赤ちゃん絵本『くっついた』(こぐま社)が大ヒット。思わずほおずりしたくなる子どもや動物の絵は、広く支持を集めた。その後、数多くの絵本を生み出してきた。

 キャリアを積み重ね、「最近は力が抜けて、純粋に絵を描くのが楽しい」。また、今回の絵本をきっかけに、「作っていた当時の気分が戻ってきた」と話す。

 「『かわいい』も好きだけど、『かっこいい』もいい。これまでは赤ちゃん絵本にかける時間が長かったけれど、いろいろなものを試みてみたい」

 7月には、右からも左からも読めるという仕掛けの絵本が刊行される予定だ。

 「描いていて、面白いなと思えるようなものを作っていきたい」。少年のように目を輝かせた。(偕成社、1870円)泉田友紀