弾道ミサイル攻撃が日本本土に飛んできたとき、多くの人に「逃げ場」がないという「恐ろしい現実」

AI要約

2011年3月11日に発生した東日本大震災を経て、日本は震災対策について真剣に考える必要がある。

ウクライナの状況を踏まえて、日本における避難施設の不足や強化が問題となっている。

政府や自治体も固い対策が必要であり、個人も防災意識を高めることが大切だ。

弾道ミサイル攻撃が日本本土に飛んできたとき、多くの人に「逃げ場」がないという「恐ろしい現実」

 2011年3月11日、戦後最大の自然災害となる東日本大震災が発生した。あれから13年、令和6年能登半島地震をはじめ何度も震災が起きている。

 しかしながら、これから起きうる大きな自然災害(首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山噴火)について本当の意味で防災意識を持っている人はどれほどいるだろうか。

 もはや誰もが大地震から逃れられない時代、10刷ベストセラーの話題書『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれ、また、防災に必要なデータ・対策が1冊にまとまっている。

 (※本記事は宮地美陽子『首都防衛』から抜粋・編集したものです)

 2022年2月に始まったロシアのウクライナ軍事侵攻は、国境付近で激戦が繰り広げられる一方、ロシア軍によるミサイルやドローンなどの大規模攻撃がウクライナの首都・キーウを襲った。空爆から逃げようと地下シェルターに避難する人々の姿は世界中に発信され、その精神的・身体的なダメージに思いを寄せた人は少なくないだろう。

 だが、もしも日本で同様の事態が発生した場合、あなたはどうするだろうか。我が国には避難するにも地下シェルターが存在せず、「逃げ場」がないのだ。それは生死を分ける決定的な違いになるかもしれない。

 冷戦時代に西側勢力と向き合う前線基地だったウクライナには、4000を超えるシェルターが存在するといわれる。キーウ州は2022年、ロシアによる核攻撃に備えて400ヵ所以上の核シェルターも地下に準備する計画を明らかにし、国民の避難先確保に力を入れてきた。地下100メートルにある地下鉄の駅も臨時シェルターとして活用されている。

 米国やロシア、英国、イスラエルなどは核シェルターが普及しているものの、日本は「ほぼゼロ」だ。首都・東京には地下40メートル超の大江戸線などがあるが、防爆や換気など核シェルターとしての役割は期待できない。「核」に限らなくても、いざというときの避難先は乏しいと言える。

 2017年、政府の「弾道ミサイルを想定したシェルターのあり方に関する検討会」は、既存の地下鉄駅では核ミサイルや生物化学兵器に対応できる気密性が困難と判断した。岸田文雄首相は2022年10月17日の衆議院予算委員会で「現実的に対策を講じていく必要があるという問題意識は持っている」と述べている。政府は沖縄県宮古島市にシェルターを整備する方針を固め、ガイドラインを年内に策定する予定だ。

 自治体は国民保護法に基づき、ミサイル攻撃などの爆風被害を軽減するための避難施設として緊急一時避難施設を指定している。東京では大江戸線光が丘駅や丸ノ内線四谷三丁目駅、日比谷線秋葉原駅など地下鉄の駅に加え、都庁の地下駐車場など計4017ヵ所が指定されている(2023年3月31日時点)。

 ただ、全国にある5万2490ヵ所(2022年4月時点)のうち、安全性が高いとされる地下施設は1591ヵ所と1割未満だ。ウクライナの国民は相次ぐ防空警報を受けて迅速に避難しているが、首都・キーウでは避難先のシェルターが開かず、ロシア軍のミサイル攻撃で亡くなるケースもみられた。2022年12月に日本政府はシェルター整備の方針を打ち出したものの、「いざ」というときに避難できるのか、ミサイル攻撃などに本当に耐えられる避難先なのか人々の不安は尽きない。

 つづく「『まさか死んでないよな…』ある日突然、日本人を襲う大災害『最悪のシミュレーション』」では、日本でかなりの確率で起こり得る「恐怖の大連動」の全容を具体的なケース・シミュレーションで描き出している。