なぜ「犯罪レベルのカスハラ」が放置されてきたのか…悪質クレーマー対策で日本企業がやってこなかったこと

AI要約

JR東日本がカスハラ対策の方針を表明。不当要求には屈せず、従業員を守る姿勢を強調。

企業におけるカスハラ対策は難しい現実。毅然とした対応が必要だが、実際には様々な課題が存在。

JR東日本のカスハラ対策がロールモデルとして注目される。従業員保護のための決断を評価。

JR東日本が「鉄道カスハラ」には対応せず、悪質な客には厳正に対処するという方針を表明した。ビジネスコンサルタントの新田龍さんは「企業にはカスタマーハラスメントから社員を守る義務がある。理不尽な悪質クレーマーやカスハラ加害者はうちの客ではないときっぱりと宣言すべきだ」という――。(後編/全2回)

■カスハラへの「毅然とした対応」とは?

 企業における「悪質クレーマー対策」や「カスハラ対策」は、往々にして

 「悪質クレーマーの不当要求には断固として屈してはいけない!」

「従業員一丸となって毅然とした対応を!」

 といった精神論的なスローガンになりがちだ。

 しかし実態としては、組織全体として何らかの統一的な方針やマニュアルを整備しているというわけではなく、単に「現場の従業員に悪質客の対応を押し付けている」だけ、というケースも残念ながら多い。

 「揉め事やリスクは極力回避したい」という思考から、「顧客相手に店側が主張して戦う」よりも、「現場が即座に謝って、その場を丸く収めればいい」という発想になりがちなのだ。

 さらに、近年では仮に強い調子で迷惑客を排除したら、その部分だけを動画などで切り取ってSNS等で拡散され、風評被害を受けるリスクがある。危険を避けるためにも、顧客にはどこまでも丁重かつ下手にでなければならないという事情もあるだろう。

 しかし、「毅然とした対応」の主語はあくまで「企業」であり、「店舗」であり、「経営者」なのだ。それらが「理不尽な悪質クレーマーや、カスハラ加害者は当店の客ではない」と宣言して従業員を守ることこそ、本来の意味における「毅然とした対応」なのである。

■社員を守るJR東日本の“英断”

 折よく、企業としてのカスハラ対策におけるロールモデルとなり得る事例が報道された。今年4月、JR東日本はカスハラに対する方針を発表。

 「グループで働く社員1人1人を守るため、カスハラが行われた場合は、お客様への対応を致しません」

「悪質と判断した場合、警察・弁護士などに相談の上、厳正に対処します」

 と宣言したのだ。まさに、組織全体で従業員をカスハラから守る姿勢を毅然と示した例であり、ぜひ同様の取組が他社でも広がってほしいと願っている。