被爆者の半生描く紙芝居動画 英語ナレーション付きで初制作 長崎被災協

AI要約

長崎原爆被災者協議会(被災協)は、被爆者の半生を描いた紙芝居に英語のナレーションを付けた動画を制作し、ユーチューブに公開した。海外向けの発信力強化が狙い。

カナダ人の英語講師が英訳を担当し、被爆者の体験を伝える動画が注目を集めている。被爆80年プロジェクトの一環として若年層や海外に向けた広報活動に取り組んでいる。

被爆者のメッセージを未来の世代に残す取り組みに賛同した英語講師が翻訳協力し、動画制作に貢献している。被災者の声を世界に届けるための取り組みがさらに広がることが期待されている。

被爆者の半生描く紙芝居動画 英語ナレーション付きで初制作 長崎被災協

 長崎原爆被災者協議会(被災協)は、被爆者の半生を描いた紙芝居に英語のナレーションを付けた動画を初めて制作し、動画投稿サイト「ユーチューブ」に公開した。海外向けの発信力強化が狙い。英訳などを担ったカナダ人の英語講師、ジェームズ・パワーズさん(45)=長崎市=は「未来を担う世代に見てほしい」と訴える。

 動画の制作は、交流サイト(SNS)を活用して若年層や海外に向けた広報活動に注力する被爆80年プロジェクトの一環。被爆者で2019年に86歳で亡くなった池田早苗さんを取り上げた紙芝居を約14分の動画にまとめた。12歳の時に爆心地から約2キロで被爆した池田さんがきょうだい5人を失い、木片を集めて一人で弟を火葬した経験、戦後も常にがんなど健康不安にさいなまれてきた体験を伝えている。

 翻訳を買って出たパワーズさんは2003年に来日。現在は長崎日大高で英語講師を務める傍ら、休日は被爆遺構などを案内するボランティアガイドにも英語を教えている。

 今年1月、翻訳ボランティアを募る記事をインターネットで見かけた。被爆の経験や記憶が、時間の経過とともに世の中から失われることを懸念。「(被爆者の)メッセージを未来の世代に残す手助けをしたい」と被災協に協力を申し出た。

 パワーズさんにとって被爆証言の翻訳は初めての挑戦。聞き慣れない日本語も多い中、日本人の妻にも協力してもらいながら約3週間かけて完成させた。英語のナレーションも自身で吹き込んだ。「表現が難しかったが、できるだけ早苗さんの気持ちを想像した」と振り返る。

 横山照子副会長(82)は14日、長崎市内で開いた記者会見で「パワーズさんの伝えようとする気持ちが分かる。ようやく海外発信への一歩を踏み出せた」と述べた。パワーズさんは「(欧米には)戦争をすることはしょうがないという人もいるが、一般人の犠牲があることを覚えておいてほしい。もう二度と繰り返さないで」と願った。

 動画は被災協のユーチューブチャンネルで視聴できる。第2弾も計画しているという。

 (松永圭造ウィリアム)