「足元に土石流押し寄せ…」 久留米市、九州北部大雨伝える証言動画

AI要約

福岡県久留米市は、昨年の大雨被害を受けて、梅雨時期を前に大雨に備えて早めの避難を呼びかける防災啓発動画を製作した。

動画「土砂災害編」では、被災者の証言や専門家の話を通じて土石流被害の実態を伝えている。

市は動画を通じて適切な避難行動の重要性を訴え、他にも研修会などを通して防災意識の向上に努めている。

「足元に土石流押し寄せ…」 久留米市、九州北部大雨伝える証言動画

 昨年7月の九州北部大雨で大きな被害を受けた福岡県久留米市は、梅雨時期を前に大雨に向けて早めの避難を呼びかけるため、被災者の証言などを伝える防災啓発動画を製作した。今月公開した動画「土砂災害編」(約6分)は、同市田主丸町竹野地区で昨年発生した土石流被害で九死に一生を得た住民の証言や、押し寄せた土砂や流木、濁流の映像、専門家の話などで構成している。

 ◇被災者の証言

 「土砂災害編」では、竹野地区を襲った土石流被害の状況を被災者3人が証言した。

 消防団の詰め所にいた消防団員の高尾飛鳥さん(32)は、土石流が詰め所のシャッターや壁を破壊して中に押し寄せた状況を説明。「『逃げろ、逃げろ』の大声で開口部から裏に逃げた。自分の身に起こるとは思っていなかった」と振り返っている。

 出田唯さん(33)は当時、雨の様子を見ようと3歳の娘と自宅を出た直後に土石流に襲われた。「土石流が来て、すき間がまだあったから、子どもを抱きかかえて走った。無我夢中だった。この子(3歳)がいたから特に、『生きたい』と思った」と語っている。

 土石流は千ノ尾川を流れ下り、途中で2方向に分岐して土砂災害警戒区域外まで及んだ。警戒区域外に住む塚本恵子さん(73)は「いきなり『ドーン』『ガシャー』と同時になって、和室に土石流が入って、足元に土石流が来る状態」と証言。自宅1階には流木も突き刺さっていた。

 ◇災害は「まさか」ではない

 証言に続き、九州大工学研究院の西山浩司助教(災害気象工学)が「災害は『まさか』ではなく『いつか』起きる。(自分の)経験に基づかない対策が大事だ。今後、地球温暖化によって大雨の可能性も増える。繰り返し災害が起こる地域だと認識し、大雨が降る前に避難することが大事だ」と訴えている。

 動画を製作した理由について原口新五市長は「避難情報を発令してもなかなか避難につながらない。動画を見て身近な場所で災害が起きることを認識してもらいたい」と語る。その上で「警戒レベル3(高齢者等避難)以上になった時は避難してほしい。耳納連山は全て危ない可能性がある。川や山がない所も線状降水帯がとどまれば浸水する。治水対策では避難までの時間は稼げるが、大被害になった時は命の危険がある」と強調する。

 動画は市の公式ユーチューブチャンネルで公開し、市ホームページからもアクセスできる。製作中の「浸水害編」(6~7分)は今月中に公開する予定だ。動画は地域の説明会などで活用する。また市は6月、土砂災害警戒区域がある市内11校区を対象に土砂災害の研修会も開き、西山助教が講演する予定だ。【高芝菜穂子】