処理水放出、中国が土壌調査の拡大要求…水産物禁輸解除は見通せない情勢

AI要約

中国は、東京電力福島第一原子力発電所の処理水海洋放出に関連して、土壌などの調査範囲の拡大を求めているが、日本は国際原子力機関(IAEA)の基準に従って行動している。

日中韓首脳会談で岸田首相は、処理水放出を受けて日本産水産物の輸入禁止措置の撤廃を求める予定だが、両国の主張は平行線をたどり解決が難しい状況。

専門家協議では、昨年の日中首脳会談後に設立され、海洋放出問題を解決するために設けられているが、両国の立場には相違がある。

 東京電力福島第一原子力発電所の処理水海洋放出を巡る日中両政府の専門家協議で、中国側が同原発周辺の土壌など調査範囲の拡大を求めていることがわかった。日本側は国際原子力機関(IAEA)の基準に沿って必要な調査を実施しているとして応じない方針を示した。

 岸田首相は26日、日中韓首脳会談に出席するために韓国を訪問し、中国の李強(リーチャン)首相と会談する予定だ。会談で岸田首相は、処理水放出を受けた日本産水産物の輸入禁止措置の撤廃を求める方針だが、専門家協議での日中双方の主張は平行線をたどっており、解決に向けた進展は見通せない状況だ。

 専門家協議は、昨年11月に岸田首相と中国の習近平(シージンピン)国家主席が米サンフランシスコで会談した際、処理水を巡る問題について、「協議と対話を通じた解決」を図ると合意したことを受けて設置された。

 協議は1月と3月の2回行われ、日本側はIAEAの基準を踏まえて海水や魚類などのモニタリング(監視)を実施していることや、中国の専門家を含めたIAEAの調査団が定期的な調査を行っていることなどを説明した。

 これに対し、中国側は原発周辺の土壌のほか、処理水となる前の汚染水の水質について新たに調査するよう要請。IAEAが国際基準として示した海域を越えてモニタリングを行うべきだとも訴えたという。

 日中両政府は、ソウルでの岸田首相と李氏による会談の事前協議のため、今月中旬に上川外相と中国の王毅(ワンイー)外相(共産党政治局員)の会談を模索したが、処理水を巡る問題で折り合えず、開催は見送られた。日本政府関係者は「中国側に処理水問題を進展させようという意思は感じられない」と話す。