農業被害深刻、アライグマやヌートリア捕獲に市が報奨金1匹3000円

AI要約

兵庫県加東市がアライグマやヌートリア、ハクビシンの駆除施策として報奨金を導入。市内で果樹園を営んでいた農家が被害に苦しんで閉園を決めるなど、実態が深刻化している。

報奨金は捕獲檻を利用する個人や団体に対して支給され、死んだ個体には支給されない。他市や県でも同様の施策が行われており、被害を減らすための協力を促す狙いがある。

市内でアライグマの捕獲数は増加し、農作物への被害も顕著になっている。被害を受けた農家は檻や電気柵を使っても解決せず、協力体制の必要性を訴えている。

 兵庫県加東市は今年度、アライグマやヌートリア、ハクビシンを1匹捕獲するごとに報奨金3000円を出す施策を始めた。特定外来生物などによる農業被害は同市でも深刻で、より積極的に協力してもらうのが目的。県は各市町に駆除のための交付金を出しているが、個人に支出するのは珍しいという。(坂木二郎)

 対象は加東市から捕獲檻(おり)の貸し出しを受けるか、市に登録された檻を所有する個人や団体。成獣、幼獣は問わないが、死んだ個体に報奨金は出さない。大阪府貝塚市や和歌山県有田川町などが同様の報奨金を出しており、加東市農地整備課は「協力者を増やし、農産物への被害を少しでも減らせたら」と期待する。

 同市で果樹園を営んでいた女性(78)は昨年、「こんなに被害があるならやめた方がいい」と閉園を決めた。

 約10アールを耕し、ピオーネや藤稔(ふじみのり)などの大粒ブドウを育てていたが、10年ほど前からアライグマによる被害が出始めた。先代から受け継ぎ、夫と切り盛りしてきた畑。市から檻を借りたり電気柵を張り巡らせたりしたが、被害は減らなかった。

 夏の収穫期になると一晩で数十房が食べられ「苦労して育て、いいのが出来たと思ったらやられた」。現在は年金などで生計を立てており、近隣でも獣害で営農をあきらめた家があるという。小林さんは「檻を置いても、それだけですぐに被害が減ることはない。農家は息長く市と協力していく必要があるのでは」と話す。

 2022年度、市内のアライグマの捕獲数は444匹。ヌートリアも含めた農作物の被害は238万円と前年から倍増した。県全体では、過去最多の8563匹を捕獲している。