「伝説の踊り子」がまさかの逮捕...「男たちの憧れ」を「トコロテン売り」へと変えた衝撃の事件
伝説のストリッパー一条さゆりの生涯を描いた漫画師中田カウスとの対談。一条さゆりの栄光と転落、晩年の姿が語られる。
カウスが一条さゆりを偲んで、エル・ポニエンテの店で飲む姿が描かれる。
一条さゆりの引退後の苦難、自転車でトコロテンを売る姿が描かれる。
1960年代ストリップの世界で頂点に君臨した女性がいた。やさしさと厳しさを兼ねそろえ、どこか不幸さを感じさせながらも昭和の男社会を狂気的に魅了した伝説のストリッパー、“一条さゆり”。しかし栄華を極めたあと、転落していく。そんな彼女を人気漫才師中田カウス・ボタンのカウスが「今あるのは彼女のおかげ」とまで慕うのはいったいなぜか。
「一条さゆり」という昭和が生んだ伝説の踊り子の生き様を記録した『踊る菩薩』(小倉孝保著)から、彼女の生涯と昭和の日本社会の“変化”を紐解いていく。
『踊る菩薩』連載第1回
金融街で知られる大阪・北浜の一角に、スペイン料理の名店エル・ポニエンテはある。土佐堀川の向こうは中之島公園である。
2021年暮れ、私はこの店の窓際テーブル席で中田カウスと向き合っていた。中田ボタンとのコンビで根強い人気を誇る漫才師である。夜になって冷え込みが厳しくなってきた。
カウスはスペイン産ビール「クルスカンポ」を注文すると、店員にグラスをもう一つ頼んだ。運ばれてきた瓶ビールを自分のグラスに注いだ彼は、残りをもう一つのグラスに注ぎ、それを左横の棚に置いた。
「これは一条さんの分です。さあ、今日は一緒にやり(飲み)ましょう」
カウスはこう言って、自分のグラスを顔の辺りまで上げたあと、「一条の」グラスと合わせた。カチンと小さな音が響いた。店内にはフラメンコ音楽が静かに流れている。
「一条さん」とは伝説のストリッパー、一条さゆり(初代)である。1960年代から70年代初めにかけ、「特出し」と呼ばれる芸で男たちの目を釘付けにした踊り子だった。
「ちょうどあそこです。一条さんを最後に見たのは」
カウスは窓の向こうを指さした。ライトアップされた大阪市中央公会堂が夜の中洲に浮かんでいる。
「あの公会堂脇の道で、一条さんが汗をかきながらアイスクリームか何かを売っていた。声は掛けられませんでした。もう、亡くなって24年になりますか。今日は供養のつもりで、(取材を)受けたんです」
一条が売っていたのはアイスクリームではない。ストリップの世界で頂点を極めた彼女は引退公演中に公然わいせつの疑いで逮捕され、実刑判決を受けた。その裁判を闘うあいだ、食べていくため自転車でトコロテンを売って歩いていた。
私は晩年の一条と交流を持った。彼女は日雇い労働者の街、大阪・西成の「あいりん地区」(通称・釜ケ崎)で生活保護を受けながら一人で暮らしていた。