韓国の20年前の集団性的暴行事件の加害者さらしたユーチューバーの“功罪” 最初は溜飲下げても…

AI要約

告白映像が話題になった韓国の事件についての概要と背景を明らかにする。

2004年に起きた密陽女子中学生集団性的暴行事件の詳細や事件後の対応について説明する。

事件が再燃した理由や、20年後になって発覚した新たな情報について触れる。

韓国の20年前の集団性的暴行事件の加害者さらしたユーチューバーの“功罪” 最初は溜飲下げても…

 韓国では、ユーチューブとSNSにある男性の「告白映像」がアップされ、話題になっている。告白といっても、好きな女性に愛を伝えるといったロマンチックなものではない。暗い背景に硬い顔をしたまま、自分が過去に女子中学生に性的暴行をした一人であることを打ち明ける映像だった。この告白は、単に一人の男が過去の犯罪を“懺悔”したという話ではない。韓国国民を震撼させた大事件にかかわる発言なだけに、さまざまな反応が沸き起こったのだ。

 彼は2004年、韓国中を騒然とさせた「密陽女子中学生集団性的暴行事件」の加害者の一人だった。慶尚南道密陽市で同年1月から11月まで、地域の高校の男子生徒44人が近隣地域の女子中学生に性的な暴行をし続けた事件だ。

 10年後、この事件を元にした映画が上映され、日本でも「ハン・ゴンジュ 17歳の涙」として公開された。そして韓国では最近、ネットフリックスでも配信され、話題になっている。

■10カ月以上呼び出して複数人で性的暴行を続けた

 しかし20年後の今、なぜこの事件が再燃しているのだろうか。

 まずは「密陽女子中学生集団性的暴行事件」の概略について。

 03年6月、被害者の女子中学生が間違い電話で会話したことが発端となった。その番号の相手は、のちに容疑者となる男子生徒の一人だった。彼は女子中学生に「いつか一度会おう」と誘う。半年後、彼は女子中学生を密陽市に呼び出す。

 男子生徒は、密陽市でも悪名高い暴力サークル「密陽連合」のメンバーだった。彼は女子中学生を鈍器で殴ったあと、密陽連合の友人らと一緒に性的な暴行を加えた。その状況をビデオカメラで撮影して女子中学生を脅迫し、10カ月以上呼び出して暴行を続けた。暴行に加わる連合のメンバーは増え、被害を受けた女子中学生の姉まで呼び出し、性的暴行をした。

 04年11月、被害者の女子中学生の叔母が彼女の行動に不審を抱き、警察にこれを通報すると、翌12月に容疑者らが逮捕された。集団レイプに加わった密陽連合のメンバーだけで44人もいた。犯行を助けたメンバーとその恋人たちは75人に達した。そして、複数の女子が被害に遭っていたこともわかった。

 しかしその後、事件は思わぬ展開をみせる。密陽の警察署所属の刑事らは、

「私は密陽が故郷だが、あなたたちは密陽出身でもないのに、なぜここに来て密陽の雰囲気を乱すのか」「お前たちが男を先に誘惑したのではないか」「男子生徒たちは将来密陽を導く人たちだ」

 などと驚くような発言をしたというのだ。

■息子への「寛大な処罰」を求める容疑者の親たち

 密陽性暴力相談所が2005年、密陽市の地域住民約650人を対象にアンケートを実施した。「事件の責任は女性にあるのか」という質問に「そうだ」と答えた割合が64%に達した。

 容疑者の親たちは、息子への「寛大な処罰」を求め、被害者を直接訪ねて「処罰不願書」の作成を促した。学校まで訪ねていったという。親のなかには、女子中学生の両親に、「娘をきちんと教育していたら、こんなことはなかった」「女に誘惑されて惑わされない男はいない」などと言ったという。

 被害者たちは彼らの示談の要求に勝てず、わずか5000万ウォン(約470万円/当時)で処罰不願書を作成した。10人が起訴されたが、他は少年院に入ったり、示談やボランティア活動で終わったりして、刑事処罰を受けずに事件はその後、収束していった。

 しかし韓国の国民は事件を忘れていなかった。ユーチューブのチャンネル登録者数が627万人という韓国の料理研究家が、22年の夏に密陽市のクッパ店の映像を流した。すると、今年6月1日、「奈落保管所」というユーチューブチャンネルが、この映像に出てくる店員について、「密陽集団性的暴行事件の犯人側のリーダー」と名指しする映像を配信した。その「犯人」が1986年生まれであり、すでに結婚していて娘がいることも暴露した。