オスプレイ暫定配備の千葉・木更津ルポ 騒音と事故の不安…佐賀空港移駐まで「あと1年の我慢」

AI要約

佐賀空港に陸上自衛隊のオスプレイが配備されるまでの経過と、住民の騒音や事故への不安について述べられている。

佐賀への移駐が迫り、住民は安全保障上の必要性を理解しつつも、騒音や事故の影響を受ける心配がある。

佐賀県への移駐が迫る中、移駐に伴う地域の経済的影響や住民の不満、不安が浮き彫りになっている。

オスプレイ暫定配備の千葉・木更津ルポ 騒音と事故の不安…佐賀空港移駐まで「あと1年の我慢」

 防衛省が計画する陸上自衛隊の輸送機オスプレイの佐賀空港(佐賀市)配備まで1年を切った。2020年7月から暫定配備し、全機が来年7月までに佐賀に移駐予定の木更津駐屯地(千葉県木更津市)周辺の住民は、安全保障上の必要性に理解を示しつつ、騒音や事故の不安と隣り合わせの暮らしを強いられてきた。木更津を歩き、佐賀への移駐後を考えた。

 「ドドドドドド」。午前10時半ごろ、工事中のような重低音が響いた。駐屯地と道一本挟んだ住宅街。フェンスの隙間から、低空に浮いて停止した機体が見える。ローターを上方に向け、30分ほどホバリングした。音の圧迫感で息苦しさを覚えた。

 「慣れたけど、やっぱりうるさいよ」。近くの女性(79)は言った。家族が駐屯地で働いていたため、国防の大切さは分かっている。自衛隊がいることで、災害時の安心感もある。それでも音は負担に感じる。

 70代の男性は、オスプレイの飛行で自宅の窓のサッシがガタガタ震えると話す。「苦情を言ったけど変わらない」と諦め口調だ。

 3キロ北の中島地区。離着陸の際のルートで、高度約240~270メートルを飛ぶ「場周経路」の真下に当たる。70代の夫婦は21年3月から、オスプレイが頭上に現れた回数を書き留めている。ノートは2冊目。見せてもらうと、平日の日中を中心に、多い時は1時間に10回以上飛行したと記されていた。

 市の昨年6月の騒音調査で、中島地区は「70デシベル以上」が週に118回に上った。昼間の幹線道路周辺や鉄道車内と同じレベルだが、環境省が定める航空機騒音基準の57デシベルは1日平均に基づくため、基準を超えていないことになっている。妻は持病があり自宅で過ごすことが多い。「本当は家にいたくない。爆音を聞きたくないから」と明かす。

 事故の心配も消えない。米軍のオスプレイが昨年11月、鹿児島県・屋久島のわずか1キロ沖に墜落。今年3月には、木更津のオスプレイが昨年7月に部品を落下させながら、陸自が公表していなかったことが明らかになった。「不信感が募る」と夫婦。夫は「落ちても当たらないように祈るしかない」とつぶやいた。

 佐賀空港移駐後の場周経路は、原則として海側に設定されている。防衛省九州防衛局は、環境省基準を超える騒音の範囲に住宅はなく「影響は少ない」との見解を示した。災害派遣など緊急の際は住宅地側も飛ぶ。悪天候時は佐賀県の鹿島市、白石町、福岡県の柳川市、みやま市、大牟田市も飛行ルートに想定される。同局は飛行頻度を公表していない。

 佐賀移駐に際し、政府は20年間で100億円に上る着陸料など、経済的な見返りを約束した。木更津では、交付金が自治会の集会場や、「潮干狩り場」の関連施設の改修に活用されている。ただ地元市議によると、騒音対策の住宅防音工事を巡っては、助成対象から外れた地域が不公平感を訴える事態が起きているという。

 「佐賀への移駐が迫りほっとしている」「あと1年の我慢」…。木更津ではこんな声を繰り返し聞いた。恒久的な配備となる佐賀空港。地域の負担も期限なく続くことになる。

 (井中恵仁)

 オスプレイは垂直離着陸が可能な輸送機で、島しょ部での活用に優れる。政府は海洋進出を強める中国を念頭に、長崎県佐世保市に拠点を置く離島防衛専門部隊「水陸機動団」の輸送用として、陸上自衛隊の17機を佐賀空港に配備する計画。佐賀県は2018年に受け入れを表明したが、部隊が駐留する駐屯地予定地の名義人だった地元漁協との交渉が難航した。陸自は20年7月から5年間の期限で機体を木更津駐屯地に暫定配備。国は漁協と昨年5月に土地売買を契約し、翌6月に駐屯地を着工した。