日本人は知らない、米軍がみた日本兵の「長所と弱点」

AI要約

日本軍の士気と特徴について、米軍の観察結果を紹介。

日本兵の個人的な長所と短所を列挙し、その実像を明らかにする。

ビルマ戦線での英軍将校たちの観察結果や対応策について報告。

日本人は知らない、米軍がみた日本兵の「長所と弱点」

敵という〈鏡〉に映しだされた赤裸々な真実。

日本軍というと、空疎な精神論ばかりを振り回したり、兵士たちを「玉砕」させた組織というイメージがあります。しかし日本軍=玉砕というイメージにとらわれると、なぜ戦争があれだけ長引いたのかという問いへの答えはむしろ見えづらくなってしまうおそれがあります。

※本記事は一ノ瀬俊也『日本軍と日本兵 米軍報告書は語る』から抜粋・編集したものです。

米軍はその後、各戦場で遭遇した日本兵たちの士気や行動をどう観察し、長所と短所を見いだしていったのだろうか。

IB(Intelligence Bulletin『情報公報』)1943年11月号「日本兵の士気と特徴」は、日本軍は口頭、文書上の指示において「軍紀」「士気の改善」「軍の改革」「戦闘力の改善」「天皇のための死」「兄弟のごときチームワーク」を個人、集団、多様な部隊、軍に対し非常に強調しているものの、「軍指導者の望むような士気、戦闘能力の状態は達成されないことが多い」と指摘している。

しかし、「我が野戦観察者が文書上の証拠と捕虜によって証明した」日本兵の個人的長所として、「肉体的には頑健である、準備された防御では死ぬまで戦う(このことがけっして正しくないことはアッツ島の戦いでわかった)、特に戦友が周囲にいたり、地の利を得ている時には大胆かつ勇敢である、適切な訓練のおかげでジャングルは「家」のようである、規律(とくに射撃規律)はおおむね良好である」といった点が列挙されている。

一方、日本兵の短所は「予想していなかったことに直面するとパニックに陥る、戦闘のあいだ常に決然としているわけではない、多くは射撃が下手である、時に自分で物を考えず「自分で」となると何も考えられなくなる」というものであった。

IB「日本兵の士気と特徴」は以上の考察を踏まえ、「日本兵に「超人」性は何もない、同じ人間としての弱点を持っている」と結論している。確かに勝っている時は勇敢だが追い込まれるとパニックに陥るというのは人間としてあり得ることだ。また、個人射撃は下手だが射撃規律、すなわち上官の命令による一斉射撃は良好というのは「集団戦法」が得意だという戦後の日本社会に流行した日本人論を先取りする。IBが提示したのは「日本兵超人(劣等人)伝説」とは異なる、等身大の日本人像だったのである。

IBは時にビルマ(現ミャンマー)戦線の英軍から得た日本軍情報も報じている。IB 1944年1月号「ビルマの戦いに対する観察者の論評」によると、同戦線の英軍将校たちも日本兵に対し、精神的に弱い、射撃が下手などと米軍と同じような評価を下していた。

「日本軍の虚を衝くと、奴らは全然戦う準備などしていない。奇襲するとパニックに陥り、叫び、逃げる。射撃して可能な限りすみやかに一掃すべきである。しかし日本兵がひとたび立ち止まると臆病ではなく、むしろ勇気ある戦士となる」

「日本兵は射撃がひどく下手で、特に動いている間はそうだ。組織され静止しているときの射撃はややマシだ。しかし、陣地と偽装は優秀だ」

「日本軍は英軍の砲撃を憎み、かつ恐れている。偽の攻撃で簡単にいらつかせることが出来る。我が方が叫び、足を踏みならし、全方向へ発砲し、煙幕を張り、できる限りの騒音を立てる。すると日本軍はあらゆる火器を発砲して陣地の位置を暴露する」

さらに、ある英軍将校は「日本兵は「L」の発音が苦手なので、合い言葉には「L」を多く入れよう。数日間にわたるパトロールには、日替わりの合い言葉を与えねばならない」とアドバイスしている。ビルマでも「L」が発音できない日本兵は容赦なく撃たれるのである。

英軍将校たちは対戦した日本軍の戦法について、「過去の作戦において敵は我が戦線内への浸透や側面への移動を採った。側面部での抵抗が始まると、より広く側面を衝こうとしてくる。高い地歩と厚い遮蔽物の確保に熱心だ」、つまりとにかく敵の側面に廻って包囲を試みると報じている。