夏は魅力がない?...ニセコが通年型リゾートを目指すことが空論である「納得の」理由

AI要約

ニセコは冬のスキーシーズンに集中しすぎているため、グリーンシーズンも充実させて通年でリゾート地として活性化すべきだとの意見がある。

ニセコの夏はゴルフや温泉、アウトドアアクティビティなど多彩な魅力が存在し、多くの観光客を魅了している。

夏場のニセコは避暑地としても人気があり、大規模なスポーツイベントも開催されることから、冬季だけでなく全年を通じてリゾートとして発展する可能性が高い。

夏は魅力がない?...ニセコが通年型リゾートを目指すことが空論である「納得の」理由

今や世界中から富裕層がこぞって訪れる冬の高級リゾート地となった北海道ニセコ。どうやってニセコはインバウンドをものにしたのか。海外の富裕層を取り込む外国資本の戦略、日本の観光に足りていないものとは何なのか。ニセコの成功の背景を、リゾート地・富裕層ビジネス・不動産投資の知見をもつ筆者が、これらの謎をひも解く。

*『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』(高橋克英著)より抜粋してお届けする。

『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』連載第39回

『1件50億円以上...世界最高峰のリゾート地から学ぶ「富裕層の世界」と「ニセコ」』より続く

ニセコはスキーシーズンに偏り過ぎており、グリーンシーズンも強化し、通年で賑わうリゾート地とすべきだという意見がある。ニセコにはスキー以外何もないじゃないかと、半ばやっかみのような声を耳にすることさえある。

特に夏のシーズンは冬に比べて魅力が薄いと。たしかに2018年度のニセコ町の外国人宿泊延べ数を比較しても、グリーンシーズンを主とする上期(4月~9月)が5万7143人に対して、スキーシーズンを含む下期(10月~3月)は16万51人と、夏と比べ3倍近い集客があることがわかる。

なお、2019年度は上期5万9124人、下期はコロナ禍でも10万960人だった。このため、ホテルやコンドミニアムや飲食店などでは、従業員の通年採用が難しかったり、スキーシーズンでは人材争奪となって人件費が高騰したり、必要な人材が確保できないといった問題が生じているという。

グリーンシーズンのニセコは閑散期だから夏場をいかに盛り上げるかが課題であり、通年型リゾートを目指すべきだとの指摘は、正論ではある。

しかし、本当にそれがニセコにとって正しい選択なのだろうか。

(1)ニセコはすでに夏場も魅力が多いこと

(2)夏場も稼ぐのではなく冬場だけで稼げるリゾートを目指す

という視点から以下にて反論しておきたい。

ニセコの夏は、8月でも平均最高気温は25℃前後、平均最低気温は16℃前後と過ごしやすく、もともと避暑地としても人気がある。日本人を中心に貸別荘やコンドミニアムなどの長期利用者も多い。

ニセコエリアには7ヵ所のゴルフ場があり、また温泉地としても有名で、「ホテル甘露の森」など温泉旅館が数多くあり、日帰り温泉施設も充実している。北海道の自然を生かしたラフティング、マウンテンバイク、トレッキング、キャンプ、バーベキューなどのアクティビティも充実している。

2020年はコロナ禍により、両イベントとも中止となってしまったが、夏には大きなスポーツイベントも開かれる。例年8月には北海道内最大級の自転車競技大会である「ニセコクラシック」が開催される。外国人を含め多くの参加者があり、夏のニセコを代表するスポーツイベントになっている。また、例年9月には「ニセコマラソンフェスティバル」が開催され、札幌など各地から多くの市民ランナーが参加している。

ニセコでアウトドアレジャーを手掛けるNACニセコアドベンチャーセンターでは、尻別川でのラフティング、リバーカヤック、カヌー、スタンドアップパドルボードなどに加え、トレッキング、ナイトトレッキングなどを提供している。