松山城の足元を襲った土砂崩れ 被災した高級マンション住民に募る「松山市の人災」への憤り

AI要約

愛媛県松山市で発生した大規模な土砂崩れにより、住民3人が亡くなった木造住宅やマンションに被害が及んでいる。住民たちは被害の事前予測を訴え、人災ではないかとの声が高まっている。

土砂崩れの恐怖を体験したマンション住民の証言によると、夜に激しい雨音や地鳴りがあり、部屋の中に土砂や倒木が飛び込んできた。避難した住民は繰り返し襲われる土砂崩れに怯えた。

被害を受けたマンションは高層の15階建てであり、かつては高級物件として人気があった。現在は貯水槽が破壊され、住民は生活上の困難に直面している。

松山城の足元を襲った土砂崩れ 被災した高級マンション住民に募る「松山市の人災」への憤り

 愛媛県松山市の中心部、松山城がある勝山(132メートル)で7月12日に大規模な土砂崩れが発生してから3週間が過ぎた。中止されていた松山城の天守の公開は7月31日に再開したが、土砂が流れ込んだ住宅やマンションの復旧は終わっていない。住民の間では「被害は予想できた。人災ではないか」という声が高まっている。

 この土砂崩れでは、木造住宅が巻き込まれて住民3人が亡くなったほか、隣接するマンションが大きな被害を受けた。マンション高層階のベランダにまで倒木が飛び込み、土砂や倒木が立体式駐車場や車を押しつぶしているニュース映像は、全国に衝撃を与えた。

 このマンションに住むAさんが証言する。

「すさまじい雨音で夜もなかなか眠れなかった。午前4時前に地鳴りのようなごおーっという音と揺れで目が覚めた。気づくと部屋の中に割れたガラスが飛び散り、電気もつかず真っ暗で何が起こったかわからなかった。廊下に出ると、『松山城の山が崩れた』という声がして、土砂崩れだとわかった。周囲には土とガスのにおいが充満していた。危険だ、と逃げた」

 マンションの住民たちは、近くの公民館などに避難したという。その後も土砂崩れが午前4時20分ごろ、4時56分ごろと繰り返し襲ってきて、警戒にあたっていた消防車まで流されたという。

「一緒に逃げたマンションの人は、『ベランダの窓ガラスを突き破って大きな木や土砂が家の中に入ってきた。命からがら逃げてきた』と言ってました」

 と、Aさんは恐怖の体験を振り返る。

■「松山市からは説明もない」

 被害に遭ったマンションは1998年に建設された。当時の松山市の分譲マンションとしては珍しい高層の15階建てで、総戸数66戸。

「松山城の緑がベランダから一望できる市の中心部で、近くに幹線道路があって買い物や病院に通うには便利で、その割に静かです。新築時の価格は3000万円以上で、東京などの都会とは違い分譲マンションがあまりない松山市では高級マンションでした。土砂崩れの直前も、売り物件が出ればすぐに埋まっていました」(Aさん)

 今はマンションの貯水槽が土砂で流され、水が使えなくなったので、Aさんは毎日20リットル入りタンク4つを部屋まで運び、生活している。だが、高齢の住民の中には、猛暑の中で水を運ぶのは大変だと、ホテル住まいをしている人もいるという。

 Aさんは、松山市についての不満も口にする。

「豪雨による土砂崩れ災害ですが、松山市の管理や対策が不十分だった『人災』だという声が日増しに高まっている。今年のお正月には能登半島地震、2011年には東日本大震災など広範囲で大きな災害があって、自治体が対応をしています。でも、今回の土砂崩れの被害は極めて限定された場所ですよ。にもかかわらず、松山市からは安否確認も説明もなく、野志(克仁)市長は記者会見も数回しただけ。マンションの管理会社は時々電話などで連絡をくれるから、こちらのほうがまだ頼りになる」