パリで日本人が「スリの標的」にされている……「お人好しな性格」と「集団心理」に対する現地の警告

AI要約

パリはスリの都として知られ、オリンピック開催期間中には被害件数が増加する。行政は対策を講じているものの、完全に防ぐことは難しい。

日本人観光客は警戒心が高いため、被害は比較的少ないが、他の日本人と集団になると注意が緩むことがあり、被害に遭いやすくなる。

日本人の間で盗難被害が相次いでおり、スリの狙いが日本人に向けられていることがうかがえる。

パリで日本人が「スリの標的」にされている……「お人好しな性格」と「集団心理」に対する現地の警告

オリンピックが開催されている花の都・パリの裏の顔。それは、“スリの都”としての一面だ。

「ヨーロッパの中でもフランス、フランスの中でもパリはとくにスリが多い地域。私も、駐在1年目はスマホを引ったくられた。署名への協力を求められ、記入している隙にカバンの中から財布のみが丁寧に抜き取られていたこともありました。ほかには、地下鉄車内で観光客を集団で囲い込み、どさくさに紛れて貴重品を抜き取る手口も有名ですね。とにかく、件数も手口も多種多様なスリ天国。それがパリです」(全国紙パリ支局員)

とくに被害件数が増えるのは、W杯やツール・ド・フランスなど、国際的なイベントの開催期間。世界最大のスポーツイベントであるオリンピックが狙われることは、想像に難くない。

行政は対策のため、五輪期間中は各駅に警官とボランティアスタッフを少なくとも10人以上配置しているが、全てを防ぐことは不可能に等しい。

「フランス中のスリが集まっていると思うよ。彼らは犯罪者だけどプロフェッショナルだから、振る舞い方がわかっている現地住民は狙わない。観光客に焦点を絞って、常に隙を狙っているんだ」(ルーヴル美術館近くのパレ・ロワイヤル=ミュゼ・デュ・ルーヴル駅を警備する警官)

「被害に遭う日本人は多い?」と記者が尋ねると、この警官は意外にもこう答えた。

「正直、アジア人の区別はつかないし、詳しい数字はわからないけれど、一人で来ている日本人っぽい人たちは常に周りを警戒してるし、荷物も離さないことが多いから、なにか盗られることは少ないんじゃないかな」

ところが、そんな日本人の警戒心は条件が一つ変わると一気に失われるという。

「別の日本人に会うと、途端に油断してしまう。さっきまで静かに周りを見渡していた人が、集団になった途端に貴重品から目を離したり、挙げ句の果てには空いている隣の座席に荷物を置いておしゃべりに興じたりするんですよ。それって、こっちでは『盗ってください』って言っているようなもの。しかも、怪しい人がいてもお人好しだからかその場を離れないので余計に被害が増えるのです」(前出・パリ支局員)

この支局員の分析を伝えると、警官は笑いながら答えた。

「騒ぎながら荷物をほったらかしにしていたら、たしかに格好の的だね。危ないからと注意してもニヤニヤしながらこちらを向いて、その後は何もなかったようにおしゃべりを続けている集団に会ったんだけど、あれは日本人だったのか……(笑)」

実際、記者と同じタイミングでパリ五輪の取材に訪れたスポーツ紙記者は、柔道の会場に向かう地下鉄車内で社用携帯をスられ、雑誌社のカメラマンは路面電車内でパスポートを紛失したという。どちらも同僚たちと次に取材する競技について話し合っていた最中のことだった。

悪いのは犯罪に手を染めているスリのほうだが、日本人がナメられ、標的にされることは疑いようのない事実なのだろう。