堀田氏「次期学習指導要領はGIGAスクール環境が前提」――関西教育ICT展

AI要約

堀田龍也氏は、教員の多忙さや人口減少による教育の現状を踏まえ、ICT活用教育の必要性について説明した。

キャリア教育の重要性や自己学習能力の育成、ICT活用による個別学習の重要性に言及した。

2027年に告示される新しい学習指導要領はGIGAスクール構想の環境を前提に検討されると述べた。

堀田氏「次期学習指導要領はGIGAスクール環境が前提」――関西教育ICT展

 東京学芸大学 教職大学院 教授の堀田龍也氏は2024年7月26日、関西教育ICT展のセミナーに登壇し、「教育の情報科の最新動向」と題して講演した。関西教育ICT展で堀田氏は毎年同じタイトルで講演しているが、今回は情報化のトレンドよりも、なぜICT活用教育が必要とされているのか、その背景説明にほとんどの時間を費やし、最後に次期学習指導要領に言及した。

 初等中等教育を担う教員が多忙で、教員の志望者も減っている状況を踏まえ、堀田氏は「給特法が改定されても小手先の対策にすぎない」と批判。「人口減少が進む中、教員の数を増やすことは現実的ではなく、今の人数でどのように教育を進めるかを考える必要がある。何かを捨てていく覚悟が求められる」との考えを示した。

 生産年齢人口が総人口の半分程度まで減少する時代に、現在の子供たちは生きていくことになる。現在と同じ社会サービスの水準を維持することは難しく、生産効率を向上させる必要がある。堀田氏は、「民間企業では在宅勤務を取り入れるなど、柔軟な働き方を進めている。教員の世界では社会の変化に対して制度が十分に対応できていないため、多くの教員が以前よりも忙しくなっている」と指摘した。

 ある会社に就職して定年まで働くというスタイルが過去のものになりつつある今、堀田氏はキャリア教育について、「これまでは『何になりたいか』を考えることだったが、現代ではその職業が将来もあるかどうか分からない。自分の人生に必要な力を自分の責任で学び続けること、つまり『学びに向かう力』が必要だ」と強調する。詰め込み教育よりも、その後に学び続ける力が重要という。

 子供たちが自分の力で学び続けるための教育を実現するには、教育現場でのICT活用が欠かせないという。堀田氏は、「全ての児童・生徒に同じペースで進むことを求めるのではなく、各自のペースに合わせた学びを提供することが重要。ICTを活用して一斉授業と個別学習を組み合わせることで、子供たちは自分のペースで学び、自分の理解度に合わせて進めることができる」と説明する。

 一斉授業では教員が児童・生徒一人ひとりに対応するのは難しいが、ある程度子供たちに任せることで個別対応が可能になる。堀田氏は、「外国語が母国語の児童への対応など、テクノロジーがなければできないことも増えている」とし、「一人ひとりを尊重する時代に、いつまでも先生が全てをコントロールしようとするのはおかしい」と断じた。

 堀田氏は最後に次期学習指導要領について、2024年度中に中教審に対して諮問され、2026年ごろに答申が出て、2027年に新しい学習指導要領が告示されるという見方を示した。それを踏まえ、「次の学習指導要領は、当然GIGAスクール構想の環境を前提に検討される。今でもICTを活用できてない地域や学校は、次の学習指導要領が実施されるときには厳しい状況に置かれるだろう」と指摘した。