〝金農旋風〟再び 吉田兄弟の祖父「甲子園に行かにゃ駄目だ」

AI要約

金足農業高校の吉田大輝投手が決死の覚悟で甲子園出場を果たし、祖父も喜びに包まれる。

吉田大輝投手の父親が支え、祖父も孫の活躍を見守る中、甲子園出場を果たす。

金足農業高校は6年ぶり7度目の甲子園出場を決め、高校野球ファンに大きな感動を与えた。

〝金農旋風〟再び 吉田兄弟の祖父「甲子園に行かにゃ駄目だ」

 「エースとして死ぬ気で投げなきゃいけない。チームを勝たせたい思いは誰にも負けない」。決死の覚悟でマウンドに上がり続けた金足農業高校の吉田大輝投手(2年)は、第106回全国高校野球選手権大会(夏の甲子園)出場を決める最後の打者を三振で仕留めると、勢いよく人差し指を立て、歓喜の輪の中で喜びを爆発させた。

 観客席で手をたたき目頭を熱くしたのは、秋田県潟上市の吉田理正さん(76)。吉田大輝投手の祖父だ。JA秋田みなみ(現JA秋田なまはげ)に36年間勤め、退職後に梨農家となり、約50アールの園地で「幸水」「かほり」などを手がける。

 思い出すのは、孫を支える日々だ。両親が共働きの吉田大輝選手のために、トスバッティングを手伝い、寂しい思いをさせまいと自宅に呼び寄せ、自慢の梨やリンゴを振る舞った。今は高齢のため練習相手はできないが、孫の負担を和らげようと、最寄り駅まで車で送迎するなど、常に近くで寄り添い続けた。

 昨年は梨が不作だった。春先の低温で果樹に被害が出る凍霜害が園地を直撃、約9割の収穫を断念した。その苦しさを紛らわせてくれたのが、孫の活躍だった。今大会期間中は、高品質な梨を作る上で重要な摘果作業などに追われながらも、その合間を縫って毎試合球場に駆け付けた。

 2018年に“金農旋風”を巻き起こした一人で現在はオリックスの吉田輝星投手(23)に続く孫の甲子園出場に「ここまでやるとは思わなかった。農作業やめてでも甲子園に行かにゃ駄目だ」と瞳を輝かせた。

 決勝で攻守に光った高橋佳佑主将(3年)は、6年前の金農旋風の立役者の一人で同校の非常勤講師と野球部コーチを兼任する高橋佑輔さん(23)が兄だ。

 これまでの道のりは平たんではなかった。1年時には、部内で上級生によるいじめが明らかとなり、3カ月間対外試合禁止の処分が下ったこともあった。どん底から、はい上がっての悲願だけに「甲子園で勝利し、地方にある農業高校の野球部でも『頑張ればできるんだ』ということを、全国の農高生に証明したい」と力を込める。

(前田大介)

<メモ>

 第106回全国高校野球選手権秋田大会は21日、秋田市で決勝を行い、金足農業高校が6―5で秋田商業高校を破り、6年ぶり7度目の甲子園出場を決めた。前回出場した2018年には、吉田大輝投手の兄で現オリックスの吉田輝星投手を擁し、準優勝。球史に残る活躍が、高校野球ファン以外にも共感を呼び“金農旋風”と称し、社会現象となった。