【博多ストーカー殺人】「できる限り厳しい処罰を」被害者母が悲痛な訴え…本誌が取材していた「懲役20年」被告の“素顔”

AI要約

2023年1月16日、ストーカー被害を訴えた川野美樹さんが、知人の寺内進に包丁で殺害される凄惨な事件が発生。

寺内被告は待ち伏せし、川野さんに包丁を突き刺すと逃走、裁判員裁判で懲役20年の判決が下される。

寺内被告の異常な性格やストーカー行為、そして被害者の母親の心情を明らかにする取材が行われた。

川野さんは一人娘を支えるシングルマザーであり、被告には死刑を望む悲痛な叫びが寄せられる。

【博多ストーカー殺人】「できる限り厳しい処罰を」被害者母が悲痛な訴え…本誌が取材していた「懲役20年」被告の“素顔”

 事件は凄惨を極めた。

 2023年1月16日、寺内進被告は手提げバッグに刃渡りおよそ24cmの包丁を忍ばせ、知り合いだった川野美樹さん(当時38)を、彼女の勤務先がある福岡市博多区の歩道上で待ち伏せをした。

 午後6時6分、帰宅する川野さんに「おい」と声をかけ、気がついた川野さんが立ち去ると、寺内被告はそれについて行った。そして、川野さんが警察に「つきまとい」の被害申告をしたことへの文句を言い、謝罪を求めたが、川野さんが「離して。しつこい。警察で話そう」と言うと、激高。バッグから包丁を取り出し、逆手に持った包丁を川野さんに振り下ろし胸を突き刺した。さらに転倒した川野さんの頭、首、背中など、少なくとも17カ所を突き刺し、川野さんはその場で絶命した。寺内被告はその場から逃走した。

 逮捕された寺内被告は、殺人罪やストーカー規制法違反などで起訴され、2023年6月17日に裁判員裁判が開始。その一審判決「懲役20年」(求刑30年)が6月28日に言い渡され、控訴期限の7月12日までに検察側、被告側の双方が控訴手続きをしなかったため、一審判決が確定したことがわかった。

 事件当時、本誌は寺内被告の知人を取材していた。大阪府出身の寺内被告は、2019年12月に地元にオープンしたバーの“雇われ店長”として働いていた。しかし、そこは「ぼったくり店ですよ。知人が行ったら、1杯飲んだくらいで1万円。『えらい高い』と愚痴ると、『どこがや!』と逆ギレ。結局、『5万円払わされた』と言っていました」(近隣店舗の店主)と、さんざんな評判で、わずか1カ月ほどで潰れたという。その後、福岡・中洲に働き場所を求めた寺内被告は「M」に勤務した。

 寺内被告の知人は、彼の性格をこう語っていた。

「彼は酒が入ると『けんかで大阪のてっぺん張った』とか、自分の武勇伝ばかり話す。かなり自己肯定感が強い男で『女にはモテる』と、自慢していた。お客さんに、すぐいちゃもんつけてけんかになるし、かなりの変わり者だった」

 その性格は、だんだんと仕事にも表われるようになったという。別の知人は、こう明かしていた。

「約1年前、ほかの店員とトラブルになり、『M』をクビに。同じグループの『P』という店で働くことになったんです。『P』の店長は、厄介者の面倒でも見てくれると評判でした」

 その「P」の店長は「クビになってシュンとしていたのか、うちでは酒をそんなに飲まなかったね」と言っていたが、店長は2人の交際の様子も目撃していた。

「川野さんは『みか』という源氏名で働いていて、寺内もそう呼んでいました。2022年の春ごろから交際していたらしいけど、最初は僕も気づかなかった。だから2022年10月、警察からストーカー行為について教えられたときは驚きましたよ。

 グループ内では解雇の声も出ましたが、本人も反省していたので、店の仕事を続けさせることにしたんです。大晦日の忘年会では『みなさんにご迷惑をおかけしました。来年こそはがんばります』と挨拶していて、1月13日、14日も普通に働いていました。こんなことになるとは……」

 普通に働いていた、というその2日後には事件が起こったわけだ。裁判では、寺内被告が路上で川野さんを待つ『待ち伏せ』がストーカー行為にあたるかどうかなどが争点になった。

「寺内被告は『(会ったのは)偶然だった』と否認していましたが、福岡地裁の冨田敦史裁判長は、つきまといを認定、『ストーカー規制法違反にあたる』としました。

 シングルマザーだった川野さんは、平日は人材派遣会社、週末は飲食店でアルバイトをしながら、ひとり娘を懸命に育てていました。裁判では、川野さんの母親の意見陳述書が検察により代読されましたが、法廷内ではすすり泣きの声が聞こえました」(社会部記者)

 意見陳述書には、被害者の母からの悲痛な叫びが書かれていた。

「被告に対しては死刑にしてほしいと思います。死刑にしても娘が戻ってくるわけではないですが、極刑を望みます。法廷でこうして思いを伝えると被告が逆恨みするのではないかと不安です。

 娘と大好きなお酒も一緒に飲めないし、思い出も作れない。娘を思い出して胸に穴が開いてしまった気持ちです。事件後、ストーカー事件を耳にすることがあります。被告からのストーカー被害に手段を尽くしたのに、殺害されてやりきれなさを感じます。できる限り厳しい処罰を望みます。そうしないとストーカー被害は防げないと思います。被告が反省できるとは思わないです。できるだけ長く刑務所へ入れてください」