伊藤忠の株主総会で環境活動家が「長々と持論を展開」 神宮外苑再開発に関して異例の声明を発表

AI要約

伊藤忠商事が東京・明治神宮外苑の再開発計画に関する声明を公表し、環境活動家との質疑応答について報告。

再開発計画は神宮外苑の環境保全を重視し、施設の建替えが必要であると説明。

同社が地域一体開発の手法でコンソーシアムに参画し、施設建替えには収益を循環させることを計画。

伊藤忠の株主総会で環境活動家が「長々と持論を展開」 神宮外苑再開発に関して異例の声明を発表

 東京・明治神宮外苑の再開発計画について、事業者の1つである伊藤忠商事は2024年7月5日までに、再開発に参加する意義などを伝える声明を公式サイトで発表した。同社の株主総会では、同計画に関する質疑応答の時間で、環境活動家が長々と持論を展開する事態もあったと報告している。

■「一部の方々の誤解とは全く異なる」

 伊藤忠商事は7月3日、「神宮外苑再開発について」という声明を発表。2023年10月に同社が運営する施設で、環境問題に取り組む一部の活動家から落書きされるという被害を受けたと報告した。

 また、24年6月21日の株主総会では、神宮外苑再開発について説明したものの、質疑応答に入ると、議長が論点整理などをお願いしたにも関わらず、環境活動家が長々と持論を展開する事態も起こったという。

 こうした状況を踏まえ、同社は「改めまして今一度、正しくご理解いただくために、当社が再開発に参加する意義や緑の保全についてご説明をさせていただきます」とした。

「まず『再開発』という言葉から、当プロジェクトが一帯の樹木や自然環境をむやみに破壊してしまうかのような誤解が生じているのではないかと懸念しております。我々の計画は今の、そしてこれからの『みどりを守る』プロジェクトであり、環境が破壊されてしまうことを懸念されている一部の方々の誤解とは全く異なるものです」

神宮外苑の緑を維持するためには、継続的な樹木の管理、倒木や古くなった樹木の植え替えが必要とのこと。神宮外苑の緑は人工林で、これらの管理や維持を行っているのは、明治神宮をはじめとする土地所有者だという。

「土地所有者の弛まぬ自助努力により、永年に亘り神宮外苑のみどりは守られてきました。因みに、当社敷地には当社社屋と付帯商業施設があり、樹木につきましては街路樹や生垣、中庭の植栽などがあるのみです」

 伊藤忠商事によれば、「みどりを守る」には多くの資金が必要で、築76年の秩父宮ラグビー場、築約100年の神宮球場などの神宮外苑の施設による収入から賄っている。一方、これらの施設の老朽化は進んでいるため、施設の安全性・防災性の向上、バリアフリー対応などへの更新という観点から、建て替えが喫緊の課題だ。同社の本社ビルも同様とのこと。

 同社は、プロジェクトに参画した経緯を、こう説明する。

「築43年を経過し老朽化が始まりつつある東京本社ビルの建替を検討するにあたり、既に計画検討が始まっていた神宮外苑の『みどりを守る』ための施設建替計画において、各社の建設費捻出や事業継続性が課題であったことから、当社も含めた地域一体開発という手法で解決していこう、と声をかけていただいたことに始まります」

この手法は、地域全体で新たに建設可能となる総床面積を、土地所有者の計画ごとに按分し、その権利に応じた資金をコンソーシアムに拠出するというものだ。

 同社が単独で建て替えをする場合は法令のさまざまな規制で、同社の現本社ビルよりも低いビルしか建設できないが、一体開発に参画することでより大きなビルを建設することが可能となり、東京本社ビル敷地の資産価値が増加するという。

 また、同社がコンソーシアムに拠出する資金も、神宮外苑の施設建替や更新に活用され、収益が生まれ、「将来に亘り神宮外苑の『みどりを守り続ける』ためへと循環していく」とのことだ。

「当プロジェクトは、既存樹木を出来る限り守りながら移植や新植もおこない、緑の量をこれまでよりも増やし、より豊かな自然環境を創っていくという計画です。有名な4列の銀杏並木については計画策定当初から伐採が検討されたことは全くなく、将来に亘り保全されます」