【日本が情報の草刈り場に】中国企業のデータセンター上陸は、情報活用の敵基地となる

AI要約

中国の国家戦略である「『データ要素×』3カ年行動計画」が始動し、データを国家の戦略資源と位置づける。行動計画の詳細やデータ収集に関する政府の方針について述べられている。

中国政府はデータ収集のために法整備を進め、ハッキングや間接的な方法を通じてデータを収集している。また、IT企業の利用規約により利用者のデータ収集が合法化されている点も指摘されている。

データ収集によるプロファイリングの問題や中国による世論誘導への懸念が示されており、日本の世論形成にも中国のデータ戦略が影響を与えかねないことが警告されている。

【日本が情報の草刈り場に】中国企業のデータセンター上陸は、情報活用の敵基地となる

 中国の国家戦略である「『データ要素×』3カ年行動計画」がいよいよ始動した。中国国家データ局など17部門が共同して今年1月5日に発表したもので、データを国家の戦略資源と位置づけた中国共産党第20回全国代表大会の決議を受けて、2024年から26年までの3カ年の行動計画を定めたものである。

 「データ要素×工業生産」「データ要素×現代農業」「データ要素×商業流通」など12の分野にわたって、それぞれ実現すべき目標が述べられている。

 例えば、「データ要素×商業流通」を見てみると「新たな消費を拡大し、電子商取引プラットフォームがさまざまな商業事業体や関連サービス会社と深く統合することを奨励し、乗客の流れ、消費者行動、交通状況、人間性などの市場環境データに依存して統合されたデータ収集を作成します」とある。つまり通販で発生した購買データとカーナビの走行データとSNSから得られる「人間性」などのデータを全て統合してデータベース化するということだ。

 中国政府はこの国家戦略を実現するために以前から法整備を進めてきた。いわゆる「データ3法」と呼ばれるものである。17年6月に施行された「中国サイバーセキュリティ法」、21年9月施行の「中国データセキュリティ法」および11月施行の「中国個人情報保護法」である。

 いずれも国家安全保障のために国内のデータは極力中国国内に留めおき、海外のデータは「自由なデータの流通」の名の下にデータ収集を可能とすることを原則としている。また、民間企業に対しては、強固なデータ保全を求め、違反した場合には行政罰および刑事責任を課すことができるとする一方で、中国政府すなわち中国共産党は自由にデータへのアクセスができるとしている。

 中国政府がデータを集める方法は、直接的方法と間接的方法がある。直接的方法とは、いわゆるハッキングである。中国の諜報機関などが契約するiSoon社などの民間のハッカー集団に指示して、他国の軍需産業や宇宙産業などの組織が持つデータを盗ませていることは、三菱電機や宇宙航空研究開発機構(JAXA)の例を挙げるまでもなく承知の通りである。

 間接的方法とはソーシャルメディアのTikTokや大手通販サイトのTemuといった民間企業を通して断片的な情報を集める方法である。いわゆるモザイク理論(mosaic theory)、別名コンパイル理論(compilation theory)に基づくデータ収集である。

 モザイク理論とは、個々の情報は、それ自体では重要でないように見えても、他の関連するデータと組み合わせることで、重要な洞察を得ることができるという理論である。「データ要素×」は正にモザイク理論に基づく国家戦略なのだ。

 IT企業が掲げる利用規約には、一様に「お客様は、当社の規定に従って、当社がお客様の個人情報 (お客様のアカウントおよびユーザー情報を含む) を収集、アクセス、使用、保存、開示する場合があることを認め、これに同意するものとします」とあり、利用者はTikTokやTemuの一方的な利用規約に同意させられており、表面的には合法的にデータ収集されているのである。

 直接的方法は、誰の目にも明らかでわかりやすい。ただ本当に中国によるものなのか確認する方法がなく、ほとんどは状況証拠による推測にすぎないものの、警戒はできる。

 問題は、モザイク理論によるデータ収集である。データが収集され集積されることによって確実にプロファイリングされていることに気づかず、利用者としての個人にその危機感はない。直接的方法すなわちハッキングにより収集された個人情報と間接的方法により収集されたデータの統合が中国政府はできるのだ。

 統合され、プロファイリングされた個々人のデータは、特定の個人の諜報にも利用されるが、大多数の個人の情報は、世論誘導に利用される。SNSを通して流布される情報は、プロファイリングされたデータからその虚偽の情報を信じやすい人に発信されるのだ。相次ぐハッキングの被害や中国製アプリの氾濫が続くようだと、中国の意のままに日本の世論が形成されることも近い将来起こりうると考えた方がよい。