新紙幣発行まで1週間、券売機更新に「時間もお金も取られる」と悲鳴…完全キャッシュレス移行の店も

AI要約

新紙幣の発行により、飲食店や鉄道などの事業者が対応に追われている。中小企業では券売機の改修費用が負担となり、新たな経費問題が生じている。

キャッシュレス決済の普及もあり、一部店舗では現金決済を廃止し、完全にキャッシュレス化に舵を切っているケースもある。

新しい施策への対応に追われる中、業界ごとに様々な対応策が模索されている様子がうかがえる。

 7月3日に発行される新紙幣を巡り、飲食店や鉄道などの事業者が対応に追われている。物価高騰で苦しむ中小企業からは券売機の改修や交換といった新たな負担に悲鳴が上がる。キャッシュレス決済が広がる中、新紙幣の対応だけでなく現金決済自体をやめる店舗も出ている。(田中浩司)

 「低価格帯で商売しているだけにたまらないですよ」。福岡県内を中心に十数店のラーメン店を展開する会社で営業責任者を務める60歳代男性は、ため息をついた。計25台ある券売機は新紙幣に対応するためには改修が必要で、費用は1台20万円。原材料費や光熱費の高騰分を転嫁させずに乗り切ろうとする中、新たな負担が重くのしかかる。

 新500円硬貨、インボイス(適格請求書)の導入……。国の施策に対応するため、設備投資などを余儀なくされてきた。券売機改修は8月頃を見込んでいたが、メーカー側から「2、3か月遅れる」との連絡があった。「対応に時間もお金も取られる」といら立ちを隠せない。

 九州の飲食店などで取り扱う券売機の販売やメンテナンスを行う会社は「駆け込み需要は想像以上。資材不足に人員不足も重なり、納期が遅れている」と話した。

 福岡市交通局は2年ほど前から券売機や精算機の更新を見送り、メンテナンスで寿命を延ばし、5月以降、新紙幣対応の計91台を導入。更新時期を迎えていない他の計110台は紙幣を読み取るセンサー部分の交換で対応するという。市の担当者は「更新を先送りにし、経費が抑えられた」としている。

 国内のキャッシュレス決済の比率は2010年の13%から23年は39%と大きく伸びており、経済産業省も将来的には世界最高水準の80%を目指すとしている。こうした中、新紙幣発行を機に完全キャッシュレス化に踏み切るケースもある。

 人気ラーメン店「銀座 篝(かがり)」などを展開するアデッソ(東京)は新紙幣発行に伴い一部店舗で現金を扱わず、キャッシュレス決済一本にした。担当者は「売り上げの集計業務が簡略化され、集計ミスや盗難などの心配もなくなり、管理しやすくなった」と話す。