要救助者の位置情報、携帯番号不明でも住所・氏名で要請可能に…要件緩和で救助迅速化へ

AI要約

政府は、携帯電話事業者が大規模災害時に要救助者の位置情報を提供できるようにする対応を決定した。

位置情報の提供要件が緩和され、自治体の災害対策本部も通知先に追加されることで、救助活動の迅速化が図られる。

個人情報保護を考慮しつつ、過去の位置情報を取得できる条件も設けられた。

 政府は、大規模災害時に携帯電話事業者が被災自治体の安否不明者名簿に基づいて要救助者の位置情報を提供できるようにする。提供先として従来の警察や消防だけでなく、自治体が設置する災害対策本部を追加することも決めた。1月の能登半島地震で安否不明者の捜索が課題となったことを受けた対応で、位置情報の提供要件を緩和し、救助の迅速化につなげる狙いがある。

 総務省が月内にも、携帯電話事業者や自治体に通知する。位置情報は個人情報の中でもプライバシー性が極めて高い。電気通信事業法は「通信の秘密の保護」を規定しており、政府のガイドラインでは位置情報の提供について「警察、海上保安庁、消防、その他これに準ずる機関」からの要請に基づくもので、「生命または身体に対する重大な危険が切迫している」場合に限ると定めている。

 これまでは情報提供の要請に際し、対象者の携帯電話番号をあらかじめ特定する必要があったが、今後は番号が不明でも、対象者を絞ることを条件に自治体が作成した安否不明者名簿の氏名や住所に基づく要請を可能とした。

 通信の秘密も「公共の福祉」の観点から一定の制約を受けるとされていることを踏まえ、警察などと緊密に連携する自治体の災害対策本部も「これに準ずる機関」に含まれると新たに解釈した。水没や電源切れなどで現在の位置情報が取得できない場合は、過去の情報を取得できるとした。プライバシーに配慮し、「相当程度の期間」が経過していれば認めない。

 能登半島地震では、石川県作成の安否不明者名簿を基に総務省消防庁が携帯電話事業者4社に位置情報の提供を求め、NTTドコモからは68件が寄せられ不明者の絞り込みなどに役立った。被災自治体が位置情報を取得できれば、より効率的な救助活動や災害対応につながるとし、政府が運用の見直しを検討してきた。