たばこが世界一高い国は1箱いくらか? …日本600円との格差を見て内閣参与が思いついた「儲かるビジネス」

AI要約

岸田政権は4月の衆議院補欠選挙での敗北を受けて試練に直面しているが、支持層に大きなダメージはなさそう。

喫煙者の増加が社会問題となっており、喫煙所の減少や禁煙政策が進んでいる。たばこ税収は膨大で消費税に影響がある。

日本における健康への配慮が途中であり、酒やたばこの販売制限について慎重な議論が必要。

■現在の逆風は現政権への試練

 4月の衆議院補欠選挙での自民党が3戦全敗という結果から、岸田政権は厳しい状況だとマスコミが報じているが、私はそれほど心配していない。3戦全敗といっても、2つの選挙区では候補者を立てていない不戦敗だし、直接対決で敗れた島根1区で当選した立憲民主党の亀井亜紀子氏は、元自民党の亀井久興元国土庁長官の娘であり、支援者には自民党支持者も多いとみられる。今回は、政治資金パーティー問題などでお灸を据えたいという有権者にとってちょうどよい候補者だったといえる。つまり、今回の選挙結果から、自民党支持層に大きなダメージがあったとはいえないだろう。

 政治資金パーティーの問題では、政治資金規正法違反(虚偽記入など)で、安倍派と二階派と岸田派の会計責任者や秘書が在宅起訴、略式起訴となったものの、幹部は不起訴となった。政治資金収支報告書の扱いには問題があったといえるが、議員本人の私腹を肥やすような問題はないと検察が判断したといえる。たしかに裏金やキックバックといった悪いイメージが広まってしまったし、それを払しょくできない岸田政権にも課題はある。しかし、だからといって解散ができないほど追い込まれているわけでもない。いま、自民党の顔として選挙ができるのは岸田首相ただ一人である。これも一つの試練ととらえて思い切って解散したら、議席を多少減らしたとしても、政権は十分に維持できると考えている。

■喫煙者消滅で消費税が上がる

 正直にいえば、私はいま政局以上に心配なことがある。というのも、私がよく利用していた喫煙所が閉鎖されたのである。妻の意向で自宅も禁煙。ベランダでの喫煙もマンションの管理組合で禁止となった。いったい私はどこでたばこを吸えばいいのだろう。

 2020年の改正健康増進法の施行により、屋内の原則禁煙が義務付けられた。「分煙」といいながら、世間は「禁煙」を求めているように感じる毎日だ。安心してたばこが吸える場所だった喫煙所も日に日に減っていく。

 今年3月、東海道、山陽、九州新幹線の車内に設けられた喫煙ルームが廃止されて全面禁煙となった。JR東日本の管轄の新幹線ではすでに全面禁煙だから、日本中の新幹線で、完全にたばこが吸えなくなってしまった。だが、旧国鉄の債務は、1本につき約1円の「たばこ特別税」で返済している。旧国鉄の債務を返済している愛煙家に対して、JRの仕打ちはひどいと思う。

 紙巻たばこ1箱580円のうち約6割が税金だ。JTの発表によると、内訳は国たばこ税が136.04円、地方たばこ税が152.44円、たばこ特別税が16.40円、消費税が52.72円。これらのたばこ税全体の税収は年間2兆円にのぼる。2兆円という金額は、消費税収の1%分相当だ。ちなみに、ビールの税率が約4割、ウイスキーの税率が2~3割だから、われわれ愛煙家がどれほど国や地方に貢献しているかをもっと多くの人に知ってもらいたいものだ。最近、ある経済学者が「たばこを吸う人がゼロになったら、2兆円の税収がなくなり、消費税を1%上げることになる」と話している記事を読んだ。国民の大多数から「消費税率が上がってもいいから全国民が禁煙」という声が上がるのであれば、私も禁煙にチャレンジしてみてもよいが、おそらく、消費税率を上げないことを選ぶ人がほとんどだろう。

 この莫大な税収があるから、東京都をはじめ、独自の禁煙条例を定めている自治体でも、たばこ販売を禁止していないのだと思う。本気ですべての国民に禁煙させたいなら、売らなければいいだけの話である。

■日本の状態は中途半端

 以前、厚生労働省が発表した「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」について触れた。これは飲酒に伴うリスクに関する知識の普及を推進するため、飲酒による身体への影響や疾病・行動に関するリスクなどを伝えるとともに、健康に配慮した飲酒の仕方や量についてまとめたものだ。

 このガイドラインでは、生活習慣病のリスクが高まる1日の飲酒量は男性が40グラム以上、女性は20グラム以上とされている。これはあくまでもガイドラインで罰則などはないが、国民の酒量が減少すれば、単に酒造メーカーだけではなく、飲食店やその周辺産業で働く人にとっても、ダメージは大きいうえ、他産業にこの流れが波及すれば、多くの嗜好品が消滅しかねない。嗜好品の選択に国が口出しをするためには、慎重な議論が必要だと思っている。

 ちなみにイギリスでは今年4月に、2009年以降に生まれた人は生涯にわたってたばこを買えないという法案が可決された。子どもたちにたばこを販売した店舗には罰金も科される。米国では若者に人気の果物などのフレーバーつき電子たばこ「ジュール」の発売が禁止になったという過去もある。いずれも、若年層へのたばこの健康被害を防ぐとともに、将来の喫煙者を増やさないための措置だ。

 実際にたばこが買えなくなれば、愛煙家もあきらめがつくだろうが、日本の状態は中途半端だ。「健康のため禁煙推進」といいながら、「税収のため、たばこは地元で買ってください」という。勘弁してほしい。