一般道120キロ爆走で女児死亡させた医師に「執行猶予」、なぜ高級スポーツカーの運転手に“大甘判決”がまかり通る

AI要約

2年前に起きた死亡事故の判決が言い渡され、加害者が高級外車のフェラーリで一般道で時速120キロを出していたことが注目される。

判決では、禁錮3年執行猶予5年の有罪判決が下され、社会からの憤りや疑問の声が相次いでいる。

同様の事故が起きた他のケースも取り上げられ、速度違反が危険運転に該当するかどうかについての議論が広がっている。

 6月4日、広島地裁福山支部で、2年前に起こった死亡事故の判決が言い渡された。

 本件は、加害者(当時36)が医師という職業だったこと、そして、高級外車のフェラーリで、一般道にもかかわらず時速120キロを出していたことなどから、多くのメディアが報じてきたが、判決が下された今、今度はその刑罰の“軽さ”に再び注目が集まっている。

■ 「70キロオーバーで死亡事故なのに執行猶予」に憤りの声

 事故は2022年6月18日午後8時すぎ、広島県福山市の交差点で発生した。被告が運転する直進中のフェラーリと、交差点を右折しようとした対向の軽乗用車が衝突。軽乗用車に乗っていた女児(当時9)が車外へ投げ出されて死亡し、運転していた女児の祖父と現場近くを歩いていた歩行者が重傷を負った。

 参考:<「自分の運転に過信があった」9歳の女の子死亡事故 スポーツカー医師に有罪判決 事故前から違反繰り返す>(FNNプライムオンライ 2024.6.4)

 判決内容を伝える報道によれば、裁判官は、

 「指定最高速度の2倍以上の速度で走行させた過失の程度は大きい。当時9歳の被害者を死亡させ、2人に重傷を負わせた結果は重大」としながらも、「被害に遭った対向の軽自動車側にも不注意があった」として、過失運転致死傷の罪で、禁錮3年執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。

 この判決に対して、ニュースのコメント欄やSNSには、

 「一般道で120キロが過失?  どう考えても危険運転だろ」

 「70キロオーバーで死亡事故を起こしても執行猶予で済むって?」

 「こんな判決が出るなら、スピードの取り締まりなんて必要ない」

 など、疑問や怒りの声が相次いでいる。

 「危険運転致死傷罪」は、飲酒運転や赤信号無視、制御困難な高速度での走行など、故意に危険な運転をして人を死亡させたりけがをさせたりしたドライバーを厳しく処罰するため、2001年に新設された。刑の上限は懲役20年で、懲役7年の「過失運転致死傷罪」と比較して大幅に重くなっている。

 ちなみに、自動車運転処罰法の第2条(危険運転致死傷罪)2項には、危険運転とみなされる要件のひとつとして『その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為』と明記されているが、一般道で100キロを超える常軌を逸した高速度で事故を起こしても、多くのケースで「直前までまっすぐに走れていた=制御できていた」のだから、危険運転には当たらないという判断が下されているのが現実だ。

■ 大分でも…「一般道194キロ爆走」で死亡事故起こした運転手を過失運転致死罪で起訴

 2021年2月に大分市で起こった、時速194キロでの右直事故で、弟の小柳憲さん(当時50)を亡くした長文恵さんも、今回の執行猶予判決を報道で知り、どうしても納得できないという。

 「非常に残念な判決です。法定速度の2倍を超える速度を出すことが、はたしてうっかりの『過失』でしょうか。新幹線のようにレールの上を走るのとは違います。一般道には歩道も交差点もあるのです。裁判長には、実際にそのスピードで一般道を走ってみてご覧なさいと言いたいです」

 大分の事故については2年前、以下の記事でレポートした。

 <一般道を時速194キロで爆走して死亡事故、なぜこれが「危険運転」じゃない 無謀運転の犠牲となった被害者の遺族が訴え「過失ではなく危険運転で裁きを」>(JBpress 2022.9.11)

 購入したばかりのBMW(2シリーズクーペ)を運転していた会社員の男(当時19)は、制限速度60キロの一般道で「何キロ出るか試したかった」と思い、時速194キロまで出した。そして、対向右折車と衝突し、小柳さんを死亡させたのだ。