国立ハンセン病療養所「菊池恵楓園」歴史的建造物に厚労省認定…抑圧の歴史を象徴する壁や監禁室

AI要約

熊本県合志市の国立ハンセン病療養所・菊池恵楓園で、入所者の隔離や抑圧の歴史を象徴する施設が厚生労働省によって歴史的建造物に認定された。

施設の認定により、施設の補修や保存に特化した予算措置を受けられるようになり、歴史や教訓の継承が促進されることが期待されている。

同省は各園に対象施設のリスト化を要求し、恵楓園以外にも認定された施設があることから、ハンセン病問題の歴史が大切にされている。

 熊本県合志市の国立ハンセン病療養所・菊池恵楓園で、入所者の隔離や抑圧の歴史を象徴する壁や監禁室など10施設が、ハンセン病問題解決促進法に基づく厚生労働省の歴史的建造物に認定された。九州・沖縄にある五つの療養所では初めてで、今年度から整備、保存に特化した国の予算措置を受けられるようになる。入所者は歴史や教訓の継承が進むことに期待している。

 厚労省によると、入所者の無断外出防止のためにつくられたコンクリート製の「隔離の壁」や、無断外出した入所者を閉じ込めていた監禁室などを認定。入所者への人工妊娠中絶で堕胎された胎児を弔う胎児慰霊碑と詩文、現在は歴史資料館として活用されている旧事務本館なども選ばれた。一方、園側が保存対象として申請していた新旧の納骨堂や旧礼拝堂の鐘楼の認定は見送られ、継続して審議される。

 国立療養所は厚労省の予算に基づいて運営されているが、隔離政策の歴史を伝える歴史的建造物に認定されると、施設の補修や史跡の整備の際に別枠で予算が割り当てられる。同省は、各園に保存方法を踏まえた対象施設のリスト化を求めており、3月19日の有識者検討会を経て決定した。全国では、岡山県瀬戸内市の長島愛生園と東京都東村山市の多磨全生園のそれぞれ一部が認定されており、恵楓園と同時に瀬戸内市の邑久光明園も選ばれた。

 恵楓園入所者自治会の太田明副会長(80)は「入所者がゼロになっても、ハンセン病問題と恵楓園の歴史が風化しないように施設を残す必要がある。歴史的建造物の認定は大きな一歩だ」と話した。