認知症の早期発見へ、1万人の行動分析…新薬「レカネマブ」登場で重要性高まる

AI要約

厚生労働省が認知症リスクの早期発見を目指す実証研究を本格的に開始することを発表。36自治体で1万人にスクリーニング検査を促し、医療機関への受診障害を調査する。

研究は国立長寿医療研究センター主導で行われ、検査を受けた人数やその後の行動を分析。早期診断の重要性も高まりつつあり、新薬の対象は早期患者に限定されている。

実証研究にはさまざまな方法が取り入れられ、効果的な手法を探る。費用には5億円が計上され、将来的な取り組みに活用される予定。

 認知症のリスクを早期に見つけ、医療機関につなげる効果的な方法を探す実証研究を、厚生労働省が今月にも本格的に始める。全国36自治体で約1万人に認知症の「スクリーニング検査」の受検を呼びかけ、その後の行動を調べることで、何が医療機関への受診の障害となっているかを把握する。昨年12月に治療が始まったアルツハイマー病の新薬「レカネマブ」の投与対象は早期患者に限られており、早期発見の重要性が高まっている。

 実証研究は、国立長寿医療研究センター(愛知県)が主導する厚労省の研究班が行う。札幌市や川崎市、愛知県半田市、兵庫県たつの市などの参加自治体は、主に60歳以上の住民に、日付や今いる場所を質問したり、簡単な計算をさせたりする無料の検査を受けるよう、広報紙やポスターなどで呼びかける。

 検査は、検診会場や自宅で、スマートフォンを使うなどして受ける。認知症や、前段階の軽度認知障害(MCI)の疑いがある人には、医療機関の受診を促す。

 チームは各自治体で検査を受けた人数のほか、〈1〉治療を受けた〈2〉ケアなど必要な支援に結びついた〈3〉受診しなかった――などのケースについて人数やその理由を分析する。患者や家族からの聞き取りも踏まえて、医療機関での受診や相談、予防にむけた活動を妨げている要因を見極める。

 受診率などが良かった自治体の仕組みを参考に、効果的な方法をまとめた手引を2024年度中に作成。25年度以降は、各地での取り組みに活用してもらう。

 東北大と同センターは、7種類の認知機能検査と血液検査を約1000人に受けてもらい、早期診断に効果的な手法を調べる実証研究も行う。検査には、医師らと対面で行う、スマホのアプリで行う、目の動きで認知機能をはかる機器を使う――など様々なタイプがある。すべて受けてもらい、どういった手法が効果的なのか検討する。

 厚労省は、実証研究の費用として、23年度補正予算に5億円を計上している。