佐世保女児殺害、現場知る元校長から「明日を生きる子どもたちへ」…体験つづった本を自費出版

AI要約

2004年に佐世保市立大久保小で6年女児が同級生に殺害された事件で、市教育委員会の担当者として発生直後に学校に駆けつけた小林庸輔さんが、その体験をつづった本を出版。

小林さんは事件の発生から約1時間後に学校に到着し、校内の混乱に対応した。後に校長を務め、再発防止に努める中でいのちの尊さを伝えたいという思いを持つ。

本の中では、事件当時の状況や女児の家族の写真、再発防止策などが記されており、子どもたちに「いのち」について考えさせるメッセージが込められている。

 2004年に佐世保市立大久保小で6年女児が同級生に殺害された事件で、市教育委員会の担当者として発生直後に学校に駆けつけ、後に校長を務めた同市の小林庸輔さん(66)が、事件の状況や再発防止に努めた体験をつづった本を自費出版した。表題は「明日を生きる子どもたちへ」。小林さんは、命の尊さを子どもたちに伝えたいと願っている。(小松一郎)

 小林さんは事件の発生から約1時間後、学校に到着。混乱する校内で対応に当たった。事件から10年後の14年度、志願して同小の校長に就任し、4年間務めて退職。事件から20年の節目に、「いのちの大切さを伝えたい」と執筆した。

 本は約190ページ。書き出しは、当時の状況が描かれている。

 学校に着いた小林さんはしばらくして、女児(当時12歳)がシートに包まれ、丁寧に運ばれる様子を目にした。思わず手を合わせ、「学校は安全・安心な場所であるはずなのに。本当に申し訳ない」と悔やんだ。

 校長室に残された女児の赤いランドセルには、父と、病気で亡くなった母と一緒に写った写真が入っていた。

 「母の死の悲しみを乗り越え、一生懸命生きてきたことが、ひしひしと伝わってきた」。胸が締め付けられる思いをこう振り返った。

 その後は、事件の再発防止に努めた。事件の背景には、インターネットなどでのやりとりを巡るトラブルがあったことから、市教委は子どものコミュニケーション能力の向上を図る冊子を作成。小林さんはその中核を担った。

 大久保小の校長時代には、毎年6月1日の「いのちを見つめる集会」について、周囲に廃止を求める声もあったが、「思いやりの心と態度で人に接するという子どもたちの決意を表明するよい機会」と訴え、開催を続けた。

 「集会では詳しく話さなかったが、いつかこの本を読んで、『いのち』について自らに問いかけてほしい」と教え子に呼びかけた小林さん。「どんな理由があろうとも、相手を傷つけ、死に至らしめるような事件だけは起こさないように。自分にも相手にも親や友達がいて愛する人がいて悲しむ人がいることを考えてほしい」。こう訴え、本を締めくくった。