防衛産業協力、双方の利益に 艦船整備など作業部会設置 日米定期協議が初会合

AI要約

日米両政府は防衛装備品の共同開発・生産や整備での協力推進を話し合う「日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議(DICAS)」の初会合が開催された。作業部会を設置し、ミサイルの共同生産や米海軍艦船の共同維持整備などに取り組むことで合意がなされた。

日本での米軍艦船整備の促進や、ミサイルの共同生産に関する議論が発展している。日本国内での整備実績や、米国の生産基盤を支える重要性が強調されている。

一方で、共同生産に対する日本側の下請け化懸念がある中、日本政府は国内防衛産業の基盤強化にも注力する必要がある。日米安全保障協議委員会での協議をきっかけに、防衛産業の連携を進める方針だ。

日米両政府は9、10両日、防衛装備品の共同開発・生産や整備での協力推進を話し合う「日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議(DICAS)」の初会合などを東京都内で開いた。初会合では日米双方の利益となる互恵的な事業を進めることで一致。ミサイルの共同生産や米海軍艦船の共同維持整備など4つテーマで作業部会を設置することで合意した。

■日本での米軍艦船整備を促進

9日の初会合に、日本側は深沢雅貴防衛装備庁長官、米側は国防総省で兵器調達を担当するラプランテ次官が出席した。作業部会はミサイルの共同生産、米海軍艦船の共同維持整備のほか米空軍機の共同維持整備、サプライチェーンの強靱(きょうじん)化について設ける。

11日には米海軍や防衛装備庁、海上自衛隊の担当者が出席し、艦船整備の作業部会を開催する。日本の民間施設での米軍艦船の整備促進に向けて議論を進める。

これまで日本国内では横須賀を拠点とする米海軍第7艦隊の補給艦などの整備実績がある。米側は、米国本土やグアムを拠点にインド太平洋地域に展開する艦船の整備も日本国内で実施できるようにしたい考えだ。

ミサイルの共同生産に関しては、ウクライナ支援による米軍の弾薬不足を補うため、地対空誘導弾パトリオットの生産体制強化などが議題となる見通しだ。

■共同生産で下請け化の懸念も

10日には両国の防衛関連企業約15社を交えた会合のほか、愛知県でF35戦闘機の組立工場を視察した。協議の進捗(しんちょく)は、7月下旬にも行う外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)に報告する。

DICASは、4月の日米首脳会談で新設に合意した。防衛産業の連携を通じて、インド太平洋地域での抑止力や部隊の即応性を高めることが狙いだ。

日本は同盟国として防衛装備品の共同生産・維持整備を促進することでウクライナ支援などで逼迫(ひっぱく)する米国の生産基盤を支える。米軍の艦船や航空機は従来、定期的な大規模補修のたびに米本土に戻っていたが、日本国内での整備によって、費用抑制や運用の効率化が期待される。

一方、米国との共同生産などに対しては「日本は単なる下請けになる」との懸念も根強い。日本政府は米側との協議を通じて、国内防衛産業の基盤強化に資する取り組みも追求する必要がある。(小沢慶太)