政権を手放さないためには「何でもあり」なのが自民党という政党です

AI要約

政治資金規正法改正案が可決され、今国会で成立する見通しとなった。具体的な内容は今後検討されることになり、麻生さんや維新の行動に注目が集まっている。

維新が自民党の提案に賛成したことに驚きが広がり、立憲との連携の可能性も模索されている。一方、自公が弱っている今、維新の次の動きが注目されている。

自民党内で新進気鋭の総裁選を求める声が高まる中、今後の党の展望や候補者の可能性について議論が広がっている。

政権を手放さないためには「何でもあり」なのが自民党という政党です

◆麻生さんは怒っているらしい

政治資金規正法改正案は6月6日の衆院本会議で自民党、公明党、日本維新の会3党の賛成多数で可決され衆院を通過した。今国会で成立する見通しで、会期延長はなし、会期末の解散もなし、ということになりそうだ。

岸田政権としてはこの改正案をどうしても今国会で成立させたかったので、公明、維新両党の主張を丸呑みしたものの、細部を詰める時間がなく、具体的な内容は今後検討することになっており、いわゆる生煮えの状態だ。

今回驚いたことは二つ。

一つ目は政治資金パーティー券購入者の公開基準額について、自民は当初、現行の20万円を10万円に下げることを提案したのだが、最終的に岸田文雄首相の独断で公明党の主張通り5万円にしたことだ。

知り合いの自民党秘書は「今まで2万円のパー券10枚買ってくれた人が、10万円になると5枚しか買ってくれなくなります。5万円だと2枚だけ。せめて8万円にしてくれると4枚買ってくれるんですけどね」などと愚痴っていたのだが、5万円になってさぞかしショックだろう。

麻生太郎副総裁と茂木敏充幹事長は5万円には反対、菅義偉元首相と森山裕総務会長は賛成だった、と言われており、これを機に麻生、茂木両氏の「岸田離れ」が始まるとの見方もある。「岸田離れ」は「岸田降ろし」にもつながるので危険だ。

◆維新と立憲の連携は無理なのか

驚きのもう一つは維新が賛成に回ったことだ。「政策活動費の10年後の公開」という維新案を丸呑みしたとは言え、政治改革を掲げてきた維新がこのタイミングで自民に乗るとは思わなかった。

ただ維新の人の話を聞いていていつも思うのは、政治資金への対応で維新は自民の対応をもちろん批判しているが、それ以上に立憲民主党のやり方をものすごく嫌っている。

立憲が政治資金パーティーの禁止を提案しているのに、幹部がパーティーを開催していた問題については、以前から「立憲は言うだけだ」と強い不快感を示していた。

今回の法案採決も立憲と同じ行動をするのがどうしても嫌だったのだと思う。これは実は立憲にとっては深刻な問題で、自民が弱っている今、次の選挙で立憲と維新が組めば政権交代も夢ではない。

だが今回の維新の法案賛成で「やはり維新は立憲と組む気はないな」と感じた。むしろ自公が過半数割れした時に維新が連立に入ることの方が現実的だろう。

採決をめぐっては自民のやり方がお粗末で、メディアでは「岸田政権は機能不全」「司令塔不在」などといった論調が目立つが、筆者はそうは思わない。自民党というのは生き残るためにはかっこ悪いことでも何でもやる。誰かが間違ったら誰かが直す、実にしぶとい政党なのだ。

岸田氏の公明、維新案の丸呑みは党内から反発を受けたが、だからと言って有権者が納得するというものでもないだろう。これで支持率が上がるとも思えない。

◆「新進気鋭」だけの総裁選?

ところで小泉進次郎元環境相は4日、会長を務める神奈川県連の会合で、「2009年の政権交代の時に初当選した私からすれば、あの時より怖い」と危機感をあらわにした。つまり政権を失う可能性があるという事だ。

会合では「岸田氏には身を退く決断をしてもらい、新進気鋭の総裁を選んで変革の証を国民に示さなければいけない」という意見も出た。

新進気鋭といえば、2009年初当選の「5期生」や12年初当選の「4期生」の中から誰か総裁選に出たらどうか、という話は最近あちこちで聞く。小泉氏(43歳)のほか、斎藤健経産相(64歳)、福田達夫元総務会長(57歳)、小林鷹之前経済安保相(49歳)らの名前が挙がっている。

いっそのこと岸田氏だけでなく茂木氏や石破氏など、今いる候補の人たちは全部すっ飛ばして、「新進気鋭」だけで総裁選をやるというのも面白いかもしれない。いや、もしそれで自民が選挙に勝てるなら本当にやりかねない。

自民党は1993年に下野したが、その翌年、社会党の村山富市委員長を首相に据えて政権を奪い返した。自社さ政権である。あの時は本当に驚いた。自民党はそういう強烈な柔軟性を持っている、と言うより「何でもあり」の政党であるということを頭に入れておいた方がいいと思う。