20年ぶりの新札は“世界初”偽造防止技術も 「旧紙幣が使えなくなる」誤情報、詐欺に注意

AI要約

被告が偽の1万円札を印刷し、使用して懲役3年、執行猶予4年の判決を受ける事件があり、ネット上で判決が「甘すぎる」と議論された。

通貨偽造の歴史や現行法規、最古の和同開珎を使った通貨偽造規制について紹介。通貨偽造防止技術も進化し、最新の紙幣には世界初の制作方法が取り入れられている。

最新の紙幣はホログラムや透かしなどの高度な偽造防止技術が使用され、偽造通貨の発見数は減少傾向。キャッシュレス化や技術の発展が犯罪者の動向に影響を与えている可能性がある。

20年ぶりの新札は“世界初”偽造防止技術も 「旧紙幣が使えなくなる」誤情報、詐欺に注意

5月上旬、三重県の会社員に対し、津地裁(西前征志裁判長)が、懲役3年、執行猶予4年(求刑懲役3年)の判決を言い渡した。被告は自宅のプリンターで偽の1万円札を印刷し、パチンコ店の景品交換所やコンビニで使用したとして、通貨偽造と同行使の罪などに問われていた。

裁判長は判決にあたり、「偽造の方法は比較的単純で、ホログラムや透かしがなく、取り立てて精巧とは言えない。実際に店で使われ、通貨に対する社会の信頼が害されているが、偽札はすべて回収され、害した程度は限定的」と述べ、「被告が事実を認め、実際に生じた損害を弁償。保釈中に仕事に就き、反省して更生の意欲がみられる」などとし、執行猶予を付けた。

この判決に対し、ネット上では「甘すぎる」との声が大勢を占めた。「お金は汗水たらして稼ぐもの」。誰もがそうした感覚を持っているからこそ、偽札をつくり、使う者にはより厳しい目が向けられるのだろう。

偽札をつくったり、偽札と知りながらそれを使った場合、その者は法律で罰せられる。主な取締法規は、通貨偽造・変造罪(刑法第148条第1項)、偽造通貨・変造通貨の行使罪(刑法第148条第2項)などだ。

日本最古の通貨とされる和同開珎(わどうかいちん)が鋳造されたのは和銅元年の708年。その翌年からすでに、”通貨偽造罪”を罰する規定があったといわれる(※)。<みだりに私鋳銭を鋳る者は没官し(公奴婢に落とすこと)、密告した者にはその財産を与える、私鋳銭の利益を求めて私鋳を指示した者または実際に使用した者は、杖200と徒刑を科す>というものだ。

※日本銀行金融研究所HP

通貨偽造がいかに社会悪かがよくわかるトピックのひとつといえるだろう。だからこそ、法律による処罰と併せ、通貨偽造の防止技術も新通貨発行のたびに磨き上げられている。昨今は概ね、20年周期で新紙幣が発行され、1984年、2004年、そして今年2024年7月3日に新紙幣が発行される。

冒頭の事件の偽造は「ホログラムや透かしがなく、取り立てて精巧とは言えない」とされているが、今回の新紙幣に使われている偽造防止技術は世界初の技術が盛り込まれるなど、偽造が想像しづらい、最高水準の紙幣となっている。

例えばホログラムは3Dで、傾けると三次元の肖像が回転。それ以外の図形も見る角度によって変化する。お札といえば透かしだが、最新の紙幣には従来の肖像の透かし、その背景はさらに高精細なすき入れ模様が加えられている。

他にも、紫外線を当てると表面の印章などお札の一部が光る特殊インキの使用、傾けると、表面左右両端がピンク色に光るパールインキの採用など、まるで精巧な芸術品のように最新技術を結集してつくり込まれている。

こうした高度化する偽造防止技術もあってか、偽造通貨の発見枚数は減少傾向にある。警察庁の発表では、2020年に偽造1万円札の発見が2643枚だったのが、2022年には906枚、2023年は583枚と大幅に減っている。キャッシュレス化の浸透も無関係ではなさそうだが、紙幣偽造のハードルの高さに犯罪者も及び腰になっているのかもしれない。