朝ドラ『虎に翼』が若い女性に異例の人気、「とにかく伊藤沙莉が良い」に納得感しかない理由

AI要約

NHKの連続テレビ小説『虎に翼』が若い視聴者層から熱い支持を受けている。異例のF1層(20~30代女性)の支持や、実在のモデルに基づいたストーリー展開などが人気の理由とされている。

オープニングテーマやアニメーションと実写のタイトルバックなど、細かな演出にも工夫が凝らされており、物語の背景や主人公の奮闘が引き立てられている。

物語はコミカルな要素もあるが、主人公の苦難や社会の偏見も描かれており、視聴者を引き込む展開が続いている。

朝ドラ『虎に翼』が若い女性に異例の人気、「とにかく伊藤沙莉が良い」に納得感しかない理由

 NHKの連続テレビ小説『虎に翼』が話題になっている。朝ドラは毎回SNSのトレンドを賑わせるが、今回は視聴者層が比較的若く、「朝から元気が出た」「泣いた」など熱く支持する声が大きいことが特徴だ。人気の理由は何なのか。未見の人でも今から追いつけるように解説したい(※放送されている回までのネタバレを含みます)。(フリーライター 鎌田和歌)

● 若い女性に異例の人気 今回の朝ドラは何が違う?

 5月中旬に番組最高となる視聴率17.6%を記録し、上り調子の朝ドラ『虎に翼』。50代がメイン視聴者の朝ドラにおいて、F1層(20~30代女性)の視聴者が前回、前々回より多いのも特徴のようだ。

 【参考】NHK『虎に翼』が「“F1層(20~34歳女性)”から支持される」納得の理由。朝ドラでは異例(日刊SPA!)

https://nikkan-spa.jp/1997168

 SNSで朝ドラの感想が飛び交うのは毎回のことだが、今回は実在のモデルがいることもあってか、長文でのストーリー分析や史実と照らし合わせての考証・展開予想も盛ん。主人公が弁護士なだけあって、法曹関係者からの投稿も多い。

 なぜ強く惹きつけられる人が多いのか。その理由を個人的な印象で語るとともに、未見の人も今から追いつけるように紹介したい。

● 「100年先でまた」 オープニングが良い

 オープニングテーマは米津玄師が歌う『さよーならまたいつか!』。朝から「さようなら」とはさみしい気もするが、これが戦前・戦中・戦後を生き抜いた約100年前の女性の物語だと知ると少し納得がいく。

 今回のモデルは日本初の女性弁護士の一人であり、その後、初の女性判事となった三淵嘉子(1914年生まれ)。今でこそ第一人者として名を残しているが、当時の逆風は相当なものだっただろう。

 『虎に翼』の主人公の猪爪寅子(伊藤沙莉)は裕福な家庭で育ったものの、女性法曹のいない時代の中で司法試験受験を反対され、母のはる(石田ゆり子)からはその道は「地獄」だと諭される。女の幸せは結婚にしかないと考えられた時代だった。

 歌詞の中には「血」「唾を吐く」など、ここだけ抜き出すと物騒な文字も並ぶが、激動の時代を覚悟を持って生きる寅子にぴったりと思わせるし、暗くも明るくもない絶妙な曲調が良い。

 タイトルバックはアニメーションと実写が混じる。寅子だけではなく同時代の様々な職業・境遇の女性たちが登場することで、名もなき無数の女性たちの存在を可視化している。

● クスッと笑えるが、苦難の連続 弁護士を目指す寅子の奮闘ぶり

 伊藤沙莉のコミカルな演技や、頼りないが憎めない父(猪爪直言/岡部たかし)、「俺にはわかる!」が口癖の兄(直道/上川周作)、大事な場面でお腹を壊してばかりいる居候で、後に寅子の夫となる佐田雄三(仲野太賀)のキャラクターもあって、見ていて楽しい。

 ただ、物語の展開は苦難の連続。法律を学ぶ女性たちのために初めて創設された「女子部」の入学者は、1年でほとんどが脱落する。諸事情は語られないものの、女子学生を冷やかしてバカにする男子学生の描写が「女が法律なんて」の時代の偏見の強さを感じさせる。

 残ったのは寅子と仲の良い男装の山田よね(土井志央梨)、華族令嬢の桜川涼子(桜井ユキ)、弁護士の夫を持つ大庭梅子(平岩紙)、韓国人留学生の崔香淑(ハ・ヨンス)だが、寅子とよね以外の3人は、それぞれの事情から司法試験受験を直前で断念せざるを得なくなる。

 よねは口頭試験で男装を笑われ不合格となり、結果的に寅子と2人の先輩だけが合格する。

 寅子は夢を諦めざるを得なかった仲間のためにも頑張ることを誓うが、ここで最後に立ちはだかるのが「妊娠の壁」である。これまで寅子を応援してくれていた数少ない男性の法曹家たちが、子どもを産み育てるのが女の一番の仕事とばかりに、ほくほく顔で退職を勧めるのだ。残酷な現実である。