ペーパーレス時代に「和紙」魅力体感して…靴下・壁紙・名刺、ぬくもり生かし味わい深く

AI要約

福岡県内で和紙の新しい使い道や商品開発の動きが進んでいる。八女和紙製の壁紙やアートボードを制作する「八女和紙 design WAVE」や和紙の名刺を受注する「名刺工房 まつお」などが紹介されている。

八女和紙は県指定無形文化財で、昔と比べると工房数が減少しているが、新しい世代にも和紙の魅力を伝えようという取り組みが続いている。

和紙のぬくもりや味わいを活かした商品づくりを通じて、和紙の伝統と技術を次の世代に継承していく意欲が感じられる。

 ペーパーレス化が進む一方で、福岡県内では和紙を見直す動きもある。新しい使い道を見つけたり、商品を開発したりして、紙の魅力を次の世代につなげようとしている。(鶴田明子)

 八女市の「八女和紙 design WAVE」は、八女和紙製の壁紙や、壁に飾るアートボードを制作している。手すきで出る植物繊維の動きや質感を生かして、落ち着いた空間を演出。顔料で染めて貼り合わせるなどして、岩肌や水面といった自然を表現した作品もある。和洋いずれの部屋にも合い、一般住宅からの受注もある。

 制作している井上侑子さん(32)の実家は八女和紙を製紙する「山口和紙工房」で、父の山口俊二さん(67)が6代目。八女手すき和紙組合によると、八女和紙は奈良時代まで起源が遡ると伝えられる県指定無形文化財で、戦後には約1800軒の工房があったが、現在は6軒に減った。

 井上さんは、かつては「和紙は地味」と感じていたが、5年ほど前に知人の依頼で祝儀袋を作ったのをきっかけに、和紙ならではのぬくもりに気付いた。俊二さんに紙すきを教わり、「現代の暮らしに合う形で和紙を使ってもらいたい」と壁紙やボードとしての利用を考案。壁紙施工の技術なども学び、昨年独立した。

 ボードは1万2000円からで、オンラインショップで注文を受け付けるほか、7月には福智町で展示販売会を予定。井上さんは「和紙の技術をつないできた方々に敬意を払いながら、新しい物を作っていきたい」と意気込む。

 大野城市の「名刺工房 まつお」では、松尾正美さん(68)と妻の弓子さん(69)が和紙の名刺を受注している。正美さんの実家も八女和紙を製紙する「松尾和紙工房」で、「和紙を日常で使ってほしい」と教員を早期退職し、自宅に工房を開いた。

 生け花をする人には桜の枝で染めた紙を使うなど味わいのある名刺作りを心がけており、正美さんは「和紙の名刺は会話が生まれるきっかけになりますよ」とすすめる。紙すき体験も行っている。