「サントリー天然水 1L」はなぜ“細く”なったのか? ぽっちゃりにサヨナラした理由

AI要約

ミネラルウオーター市場が拡大している背景として、健康意識の高まり、災害時の備蓄需要、猛暑などが挙げられる。

サントリー天然水が最も売れており、1Lタイプの販売数量が好調な中、形状が新しくなった理由について考察されている。

1Lタイプの歴史や反響、コンビニでの取り扱い状況なども詳しく取り上げられている。

「サントリー天然水 1L」はなぜ“細く”なったのか? ぽっちゃりにサヨナラした理由

 「えっ、水を買うの? タダで飲めるのに、買うのはもったいないなあ」――。多くの人が一度は耳にしたことがあるかもしれないが、こうしたフレーズは”死語”になりつつあるようだ。決して適当なことを言っているわけではなく、このことはデータが示している。

 ミネラルウオーター市場が伸びに伸びているのだ。国民1人当たりの年間消費量を見ると、2023年は40.2リットルで、5年前と比べると8.5リットルも増加している(日本ミネラルウォーター協会調べ)。国産の生産数量も前年を大きく上回っていて、4連続で過去最高を記録しているのだ。

 このような数字を目にすると「ピークでしょ。もうこれ以上は伸びないのでは?」と思うかもしれないが、個人的には「まだまだ」だと感じている。1人当たりの年間消費量を欧米の国と比べると、2~3倍の開きがある。ということは、まだ「水はタダで飲めるので、買うのはもったいない」といった人が多いのかもしれないし、水ではなく他の清涼飲料水を飲んでいる人も多いのかもしれない。

 それにしても、なぜこれほどミネラルウオーターを飲む人が増えているのか。理由は3つあって、1つめは健康意識の高まりである。糖分やカフェインの少ない飲料を好む傾向があって、こまめな水分補給を心がける人が増えていることが大きい。

 2つめは、災害時の備蓄需要である。2011年の東日本大震災以降、地震や豪雨の災害が続いていることもあって、ミネラルウオーターの備蓄が進んでいる。

 3つめは、猛暑である。かつて数年に一度「今年は冷夏」と言われていたこともあったが、これも“死語”になったのかもしれない。そう感じられるほど、夏がとにかく暑い。35度以上の猛暑日が増えたことによって、「カバンの中に常に水が入っている」「水を持っていないと不安」といった人も増えていそうだ。

 健康意識の高まり、災害を想定しての備蓄、猛暑――。この3つの理由で、ミネラルウオーター市場が盛り上がっているわけだが、最も売れているブランドをご存じだろうか。「サントリー天然水」(以下:天然水、製造:サントリー食品インターナショナル)である。

 2023年の年間販売数量は1億3830万ケース(対前年比7%増)で過去最高に。天然水のラインアップを見ると、2L、1L、550ml、280mlがあるが、1Lタイプの形状が新しくなったことをご存じだろうか(5月28日からリニューアル)。

 1Lタイプは家庭向けの中容量サイズとして販売していて、カタチは“ぽっちゃり”だった。持ち運びを重視するのではなく、家の冷蔵庫で冷やすことを考えると、この姿が適していたのだ。サイズを見ると、幅は90ミリ→72ミリ、高さは230ミリ→262ミリに。パッと見て、痩せただけでなく、身長も伸びた印象を受ける。

 「ははーん、分かったぞ。『天然水が売れている』そうだが、1Lタイプはイマイチなのでは。だからテコ入れのために、サイズを変えたんでしょ」などと推測されたかもしれないが、違う。1Lタイプは前年比70%増なので、むしろ好調である。であれば人気が高まっているのに、なぜこのタイミングで“細く”したのか、という疑問が残る。

 その謎を解く前に、天然水の歴史を簡単に紹介しよう。天然水の前身ともいえる「南アルプスの天然水」は1991年に登場して、当初は2Lのみ扱っていた。1Lタイプが店頭に並び始めたのは、2010年のことである。「持ち運びたいけれど、500mlだとちょっと物足りないよね」「家やオフィスでも気軽に飲みたいよね」といった消費者の声を受けて販売した。

 当時、1Lタイプの反響はどうだったのか。震災前のタイミングということを考えると、その後、多くの消費者に「ゴクゴクゴク」と飲まれている……と想像したが、そうでもないようで。ブランドマーケティング本部の稲垣亜梨沙さんによると「爆発的に売れたわけではなく、『本当に売れているの?』『お客さまの反響はどうなっているの?』と感じられるほどの状況でした」と振り返る。

 気になったので、コンビニの取り扱いを見ると、ローソンは2010年から扱っているものの、セブン-イレブンは2022年からである(一時期扱っていたものの、その後、撤退)。ファミリーマートについては、細くなってから初めて扱うことになる(※コンビニの特性上、店頭に並べるかどうかは個店の判断)。