「TOB合戦」に大手・佐川急便も参入!物流業界の「再編」が日本経済に不可欠なワケ

AI要約

物流業界で再編が進んでおり、大手企業が買収や提携を続けている。2024年問題や人手不足などの課題を解決するため、効率化や業務提携が進んでいる。

デジタル化が進む中、物流の重要性が増しており、ラスト・ワン・マイルの配送が強化されている。企業間の物流連携がさらに進展し、物流を制する者が競争力を持つことの重要性が強調されている。

日本郵便グループとセイノーグループが業務提携し、物流サービスの改善を目指している。よりオープンな形での物流事業運営が進み、他社にも利用を呼び掛ける方針となっている。

「TOB合戦」に大手・佐川急便も参入!物流業界の「再編」が日本経済に不可欠なワケ

 佐川急便を傘下に持つSGホールディングスが同業のC&Fロジホールディングスの買収に乗り出す、と報道された。C&Fロジには、同じく同業のAZ-COM丸和ホールディングスが買収を目指してTOB(株式公開買い付け)をしている。また、5月には、日本郵便グループとセイノーグループが業務提携を発表してもいる。物流業界で再編機運が高まっているのはなぜか。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

● 「物流を制する者は、世界を制す」

 宅配の担当者は昼も夜もなく一生懸命、私たちに荷物を届けてくれる。物流は、日常生活に必要不可欠な要素の一つだ。スマートフォンの登場など経済のデジタル化で、ネット通販の利用が増加したこともあり、物流の重要性は高まりこそすれ低下することはない。「物流を制する者は、世界を制す」と指摘する専門家もいる。

 わが国では、4月からトラック運転手の残業が年960時間に規制された。2024年度、輸送能力は需要を14%下回るとの見方もある。人手不足で事業継続が困難になった中小の運送業者も多い。こうした「2024年問題」をきっかけに、物流業界は再編による効率化を避けられない状況に直面している。むしろ再編が進まないと、わが国の物流が危なくなる可能性がある。

 大手企業は、トラックの共同輸送などに取り組み始めている。過去、難しかった企業間の物流の連携が、2024年問題でようやく本格化し始めた。地方では、相対的に経営体力のある事業者が同業他社を買収し、地域に密着した運送体制の強化を目指すケースもある。グローバルに事業を展開するメガ物流企業と、特定地域を対象にする中小・中堅の地域密着型企業、それぞれ、あるいは相互に、物流業界全体で再編は加速する。それは、日本経済の効率化に必要不可欠だ。

● 日本郵便とセイノー業務提携の狙いとは

 物流の問題が注目されたきっかけは、1990年代以降、米国を中心に世界で加速しているデジタル化といえる。インターネットの出現で、国境をまたいだモノやヒトの移動は加速し、グローバル企業はジャスト・イン・タイムの供給体制を強化した。情報通信技術を積極的に活用することで、在庫の確保、積み増しにかかるコストを徹底して削減した。

 2000年代、米Amazonドットコムや中国のアリババ集団など、有力プラットフォーマーがネット通販事業を強化した。いつでも、どこでも、需要者は必要なモノの入手が可能になった。特に、アマゾンは陸海空の物流網を強化し、世界中から最終目的地にまで商品を迅速に届ける体制を構築した。

 こうして、主要物流拠点から消費者がいる場所までの、いわゆるラスト・ワン・マイルをつなぐ物量の重要性が高まった。他社に先駆けて物流を強化し、顧客との関係を強化できるか否かが、企業の中長期的な業績に大きく影響する――「物流を制する者が世界を制する」という考えを、国内外の主要企業がより重視するようになった。

 そうした状況下、わが国の物流業界は2024年問題に直面した。トラック運転手の残業規制で、モノを運ぶコストは増えた。鉄道や船舶による代替輸送を行う企業もあるが、荷物の増加に対応するのは簡単ではない。人手不足からトラック運転手の確保も難しい。

 物流大手は提携を強化し、問題を解決しようとしている。代表例は、日本郵便グループとセイノーグループの業務提携だ。両社は、よりオープンな形でトラック輸送事業を運営し、収益性を高めていくという。物流拠点の共同運営を進め、他社にも利用を呼び掛ける方針のようだ。物流はよりオープンな形に変化し始めた。