孫泰蔵がシリコンバレーで見た自動運転車の未来 「移動にお金を払う時代」は終わる

AI要約

孫泰蔵氏が最先端の技術に触れて世の中の変化を感じる講演を行った。

起業家として成功を収めながら、スタートアップの支援も行っている孫氏が、自動運転車やAIによる変化を紹介。

孫氏はヤフーの共同創設者との出会いをきっかけに起業し、多くの企業を立ち上げてきたが、その中で多くの失敗も経験している。

孫泰蔵がシリコンバレーで見た自動運転車の未来 「移動にお金を払う時代」は終わる

 連続起業家の孫泰蔵氏は世界中を飛び回りながら、さまざまスタートアップを支援している。2023年11月に東京・神田で開催された「ほぼ日」の株主ミーティングにゲストとして参加。講演するとともに、ほぼ日で社長を務める糸井重里氏と対談した。

 今回は、孫氏が「AIによってこれから大きく世の中が変わる」と語った講演の内容をお伝えする。講演では前半に孫氏が起業を始めたきっかけとして、米ヤフーの共同創設者であるジェリー・ヤン氏との出会いについて話した。

 その後「人類が自動車で移動するのにお金を払う時代を終わらせる」とのビジョンを掲げた自動運転車を開発する企業など、孫氏がこれまでに出資や支援をし、世の中を変えようとしているスタートアップを紹介。AIが世の中を大きく変えていくと指摘した。(田中圭太郎、アイティメディア今野大一)

 「私は仕事柄、世界中を飛び回っていまして、最先端の技術に触れる機会が皆さんよりもちょっとだけ早いことから、これから大きく世の中が変わっていくと感じています」

 『これからの森をゆくために。』と題した孫氏の講演は、ほぼ日の株主ミーティングのイベントとして開催された。孫氏は連続起業家として成功を収める一方で、現在はシンガポールを拠点に日本や各国を行き来しながら、スタートアップの支援を手掛けている。ソフトバンクグループ会長兼社長執行役員を務める、孫正義氏の弟としても知られる。講演ではこれから起きる大きな変化について、自身が関わっているスタートアップも含めた世界の動向を紹介した。

 孫氏が起業したのは、大学に在学中の1996年。きっかけは、米ヤフーの共同創業者で、当時はまだスタンフォード大学の大学院生だったジェリー・ヤン氏と出会ったことだった。検索エンジンの可能性については米国でもまだ理解されていなかった頃、ジェリー・ヤン氏は次のように説明していたと孫氏は振り返る。

 「彼はヤフーを『ニュートンみたいな人の前でリンゴを落とすようなサービスだ』と説明しました。ニュートンがリンゴの木の前を歩いていたらリンゴが落ちて、万有引力や重力のコンセプトを思い付いた。もしもリンゴが落ちなかったら、彼は素通りして、何も思い付かなかったかもしれない。そうすると、遅かれ早かれ誰かが発見したかもしれないですけど、私たちの文明は随分遅れて、いまだに電気が発明されずに、ろうそくで暮らしていたかもしれないですし、自動車もなくて籠で移動していたかもしれない。

 当時のインターネットは一部の研究者しか使っていないものでしたが、いずれ人類全体が使うようになって、あらゆる情報や知識、知恵が載ってくるようになる。けれども、欲しい情報がぱっと手に入らなければ、(それは情報が)ないのと同じです。だから未来のニュートンのような新しい発明をする人の前に、インスピレーションをぱっと出してあげることが人類にとって必要で、人類のためにやっていると彼は言いました。それを聞いてガーンとショックを受けて、生まれて初めて興奮して寝られない経験をしました。(ヤフーの)日本語版がないことは大変な損失なので、日本での立ち上げを絶対にやらなければならないと思ったのです」

 孫氏は8畳のアパートでヤフー・ジャパンの立ち上げプロジェクトを始めたことで、起業家の道を歩むことになった。その後、多くの企業の立ち上げを成功させてきた。しかし、孫氏は「自分ほど起業に失敗した人はいないんじゃないか」と言い「だからこそ自分と同じ失敗をしないように若い起業家に伝えたい」とスタートアップを支援する理由を述べた。

 「存在感を出せた企業がある一方で、その倍くらい大失敗もしました。ロゴを見るのも嫌でトラウマになっている会社もいっぱいあって、少なくとも同世代や年下に私より失敗した人は、世界を見渡してもそんなにいないんじゃないかという自信があります。いっぱい失敗をしたから、後に続く後輩たちが頑張りたいときに、それをやると痛い目を見るよといえるようになったのかなと思っています」