サラリーマンが定年後、いちばんに変えるべき「マインド」とは?

AI要約

定年前後にお金に関する重要な決断が人生に与える影響について、税理士の板倉京氏が解説した改訂版書籍が2024年に発売された。

サラリーマンが会社にお金のことを任せきりであることが多く、定年退職を機に自分で決めることの重要性が求められる。

知らないままだと損をしてしまう可能性のある制度や情報について、解説とアドバイスが含まれた内容となっている。

サラリーマンが定年後、いちばんに変えるべき「マインド」とは?

 定年前後の決断で、人生の手取りは2000万円以上変わる! マネージャーナリストでもある税理士の板倉京氏が著し、「わかりやすい」「本当に得をした!」と大人気になった書籍が、2024年の制度改正に合わせ改訂&パワーアップ!「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」として発売されました。本連載では、本書から抜粋して、定年前後に陥りがちな「落とし穴」や知っているだけでトクするポイントを紹介していきます。

● サラリーマンはお金に関する多くのことを会社に任せてきた

 サラリーマンなら誰でも迎える定年退職の日。

 定年は人生の分岐点であり、退職をきっかけに、この先「どう働くか」や「お金」について考えはじめる人も多いと思います。

 私は、税理士として相続や資産運用のアドバイスなど、日々、50~60代の定年世代のお客様と多く接しています。また、私自身も50代になり、同世代の友人・知人からも、定年後の仕事やお金についての相談を受けることが増えてきました。

 そんな中でよく聞くのが「もっと早くお金のことを勉強しておけばよかった」ということ。「税金も保険も退職金の運用も、わからないままにしてきたけれど、板倉さんの話を聞いて『随分もったいないことをしてきたな』と後悔しています」といわれることもあります。

 サラリーマン・仕事人として優秀な人でも「お金のことはよく知らない」人はとても多いです。

 サラリーマンであれば、税金や社会保険などの手続きは、会社がやってくれます。忙しい人ほど、自分が税金や社会保険料をいくら支払っているのかさえ知らないままに、「会社がやってくれるからいいや」と、過ごされてきたのだろうと思います。正直、「こんなに仕事ができる人がこんなことも知らないのか!」と驚くことも多々ありました。そんな方々に向けて執筆した本書は非常に多くの方々に読んでいただき、23年にパワーアップした改訂版を出しました。

● 定年後は「すべて自分で決める!」

 会社を退職することになった時から、今まで会社に任せていたことも含めて、様々なことを自分で決めていくことになります。退職金の受け取り方に始まり、どこでどう働くのか、社会保険はどうするか、失業手当は、年金は……などなど……今まで考えたこともないような、まったく未知のことを「自分の判断で決めてください」といわれ、「どう決めればいいのかわからない」と途方に暮れる方も多いのです。

 退職金ひとつとっても、受け取り方次第で手取り金額は変わってきます。定年後の働き方も再雇用・転職・起業など様々な選択肢がありますし、それによって、社会保険や年金・失業手当などの扱いも変わってきます。これもすべて自分で決めなければいけないのです。これが定年前と定年後の大きなマインドの違いになります。

● 「知らなくて損をした……」を、避けるために

 常々思うのですが、税金や年金・社会保険・失業手当などの制度は、知らない人が損をする仕組みになっています。実は、トクになる制度はあるのだけれど、その制度があること自体を、役所が大声でアナウンスしてくれることはほとんどありません。

 もちろん、隠しているわけでもありませんから、役所に聞きに行けば制度の詳細や手続きなどについては、教えてくれます。でも、「役所にいってみたけど、何をどう聞けばいいのかさえわからなかった」という方も少なくありません。ましてや、「結局どうすれば一番トクなのか?」「何が自分にとっての正解なのか」を聞き出すことは、至難の業です。

 本書は、そんな「知らなくて損をした」という定年前後の後悔を、少しでもなくすことができれば、という思いで執筆した本です。定年前後に、自分で決めなくてはならない事項について、「知っておくべきこと」「どうすればいいのかを決めるための判断ポイント」「金銭的な損得の目安」などをなるべくわかりやすく、簡潔に解説することにこだわりました。

 定年前後のお客様たちと接してきた中で見えてきた、「はまりがちな落とし穴」「ちょっとした工夫でできるコスパの大きな裏ワザ」などを紹介しています。すべて実行すれば、総額で2000万円以上「手取り」を増やせる人もいると思います。

● ますます「情報弱者」が損をする世の中に

 2020年に本書の初版を出版し、ありがたいことに多くの方に読んでいただき「とてもわかりやすかった」「知らないことがたくさんあり、実際役に立った」など、うれしいお言葉をたくさんいただきました。

 しかしここ3年の間にも、定年世代をとりまく年金や税金の制度は大きく変わっています。

 年金は、繰り下げ受給の上限年齢が70歳から75歳に引き上げられました。また、高齢者が負担する保険料や医療費の負担割合も上がり続けています。税金では、小規模の自営業者にとって厳しい消費税のルール「インボイス制度」がスタートし、相続税の節税として人気の「生前贈与」のルールが大きく変更になりました。このたびの改訂版では2024年の税制改正までを盛り込んで情報をアップデートしております。

 本書が、ひとりでも多くの定年前後世代の方々にとって、老後の「働き方」や「お金」について後悔のない選択をされるのに役立つよう、心より祈っております。

 *本記事は「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」から、抜粋・編集したものです。