“コングロマリット状態”の日本の電機業界も海外企業の買収対象になる時代 収益力に対する企業価値では日立とパナソニックで明暗

AI要約

近年、電機業界では大型の買収、M&Aが頻繁に行われており、企業価値を示す指標である「EV/EBITDA倍率」が注目されている。

海外企業によるM&Aでは、日本の電機企業の多くがコングロマリット状態であるため、ノンコア事業を含めた買収が難しい状況が根底にあるが、今後は変化が期待されている。

日立製作所は高い「EV/EBITDA倍率」を示す一方、パナソニックHDは収益性の悪さから最も低い倍率となっており、両社の取り組みに注目が集まっている。

“コングロマリット状態”の日本の電機業界も海外企業の買収対象になる時代 収益力に対する企業価値では日立とパナソニックで明暗

 近年、電機業界では、大型の買収、M&Aがたびたび起こっている。シャープが鴻海に、東芝が投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)に買収されるなど、業界再編の動きは激しい。

 海外企業のM&Aの判断に際しても用いられるのが、「EV/EBITDA倍率」という指標である。これは「EV(※企業価値。一般的に「時価総額+有利子負債-現預金」で算出)」が、「EBITDA(※収益力。一般的に「営業利益+減価償却費+のれん償却費」で算出)」の何倍あるかを示すもので、M&Aの世界では「買収に使った資金を何年で回収できるか」の目安として使われる。買収に必要な金額(企業価値)が1兆円でその企業が1年に1000億円を稼ぐなら、「EV/EBITDA」は10倍で買収資金は10年で回収できる計算になるわけだ。

 企業分析情報を提供するバフェット・コードの協力のもと、ここでは電機業界の「EV/EBITDA倍率」を比較し、ランキング化した。次に海外から狙われる企業は──。

 すでにシャープが外資の軍門に下ってきたが、米中の同業界平均と比べても数値が低い企業が目立つ。「QuestHub」社の社長CEO・大熊将八氏はこう見る。

「電機各社は総合電機メーカーとして数多くの事業を抱える『コングロマリット状態』にあるため、外資を含む競合企業にとっては“ノンコア事業も含めた丸ごとは買いたくない”という心理が働き、以前は買収対象となりにくい側面があった。

 しかし、今後はアクティビストがノンコア事業を売却させたり、買収ファンドが丸ごと企業を買収してから事業単位で事業会社に売却するといった連携を行なったりすることでコングロマリット企業を買う事例が増えていく可能性は高いでしょう」

 親子上場の解消など国内グループ企業の再編をいち早く進めながら積極的に海外展開を進める日立製作所は「EV/EBITDA倍率」が12.5倍と高い数値になる一方、「多くの事業を抱えていて収益性を損なっている」(前出・有森氏)とされるパナソニックHDは4.0倍と業界大手で最も低い数値だった。