いまや新車購入で納車待ちは当たり前。中には購入すら叶わない車両も

AI要約

筆者の新車購入のエピソード。ジムニーシエラの納車待ち、特別仕様のZ900RSに惹かれるも当選ならず。希少性よりもカラーリングにこだわる姿が描かれる。

新車待ちを耐え、より好みのモデルを手に入れようとする江戸っ子の性格がうかがえる。

限定生産の希少車に挑戦するも果たせなかった願望を抱く筆者の姿が浮かび上がる。

いまや新車購入で納車待ちは当たり前。中には購入すら叶わない車両も

「3代続けば江戸っ子」と言いますから、それが確かなら僕(筆者:木下隆之)は祖父の代まで遡っても居住は東京にあったので、とりあえず江戸っ子を名乗っても良さそうです。だからなのかもしれません。じつにせっかちな性格なのです。

 スズキのジムニーシエラを予約したのは1年8カ月前のことです。トーヨータイヤのオフロードタイヤ「オープンカントリー」を履いてみたいとふと思い立ったのをきっかけに、スズキの販売店に飛び込み、なかば衝動買いの勢いで契約書にサインしたのですが、ジムニーシエラは人気モデルのようで、昨今の納車遅れの対象に……。納車になったのは今月です。よくもまあ1年8カ月も待つことができたものだと、我ながら感心しているのです。

 じつは、3カ月前に販売店の担当者から1本の電話がありました。

「大変長々とお待たせしましたが、納車の目処がつきました。1週間後にお届けできます」

 その時点で1年5カ月も待っていたこともあり、跳び上がらんばかりに興奮しました。ただし、その担当者はこう付け加えたのです。

「ただし、お待ちいただいている間にマイナーチェンジがあり、旧型になりますが……」

 ガーン……。

 問いただすと、マイナーチェンジ後のモデルを手に入れるにはさらに時間がかかるとのこと。スマホを持つ手が震えました。根が江戸っ子のせっかちなので、これ以上待つ気にもなれずに一旦は首を縦に振ったのですが、よくよく思案してみれば、せっかく新車を買うのに旧型というのもちょっと寂しい気もします。そもそも僕は人生初の新車なのです。その人生で唯一かもしれない新車が旧型とは、どうも納得できなかったのです。

 結果から言えば、さらに3カ月長く待つことにしたワケです。

 そこで思い出されたのは、2022年に発売されたカワサキの特別仕様車「Z900RS 50th Anniversary」です。伝説の「Z」のはじまりから50周年を記念したファイアーボールカラーに魅せられてカワサキの販売店に飛び込んだのですが、購入は抽選とのことでした。

 これはフェラーリのような優良顧客でないと当選しないと判断し、友人のカワサキ「Ninja ZX-25R」を借り、オーナーヅラして訪問したのですが、魂胆はすっかり見透かされたのか、あるいは公平にくじ運がなかったのか、「残念ながら……」の通知を受けとったのです。

 結局何台生産されたのかは明かされませんでしたが、希少性は十分に高く、そう簡単に当選するものではありませんよね。

 ただ、長く待ってもいいから手に入れたいと願うユーザーもいたのではないかと思います。誰もが手に入れることのできない限定生産だから価値があるわけですが、希少性の価値ではなく、単純にあのファイアーボールカラーの「Z900RS」が欲しかったのです。

 生産が遅れたのは、世界的な半導体不足に端を発したように記憶していますが、それもやや落ち着き始めています。もし「Z900RS 50th Anniversary」が限定生産でなかったとしたら、いま頃僕の手元に届いていたかもしれません。

 名前は「50th」ではなく「52nd」になっていたかもしれませんが、それでも構いません。50年という節目のモデルだから欲しかったわけではなく、単純にあのカラーリングの「Z900RS」が欲しかったわけですから。

 再販してもらえないでしょうかねぇ……。