ファミマ、1万店で光る「デジタル看板」の奮闘劇、昨年度に黒字転換、収益改善の舞台裏とは?

AI要約

ファミリーマートが新たな収益源を模索し、店舗内でデジタルサイネージ広告を展開している。設置店舗数が1万店に達し、広告事業を成長戦略の一つと位置付けている。

世界のリテールメディア広告市場の成長が注目され、小売店が広告メディアとしての価値を高めている。ファミリーマートもデジタルサイネージの設置やターゲティング広告を手掛け、広告関連事業に積極的に投資している。

広告事業の立ち上げ期には赤字が続くなど苦戦もあったが、近年は本格的な投資を進め、広告収益の拡大に期待が集まっている。

ファミマ、1万店で光る「デジタル看板」の奮闘劇、昨年度に黒字転換、収益改善の舞台裏とは?

 店頭でネットフリックスやアマゾンプライムビデオ、第一生命などのCMを流すコンビニチェーンをご存知だろうか。

 今、ファミリーマートでは、レジ上のデジタルサイネージ「ファミリーマートビジョン」を設置する店舗が増えている。設置店舗数は3月、全国のファミリーマートの約6割にあたる1万店に達した。同社はファミマビジョンを中心とした広告事業を成長戦略の1つとしている。

 コンビニはさまざまな商材やサービスを販売するだけでなく、毎日多くの人が立ち寄る場所でもある。リアルな広告媒体として、店舗はどれほどの価値があるのだろうか。

■小売り店の広告がテレビを超える? 

 ファミマの広告事業のスタートは2020年。新たな収益源を模索する中で目をつけたのが、アメリカのウォルマートやアマゾンが先行していたリテールメディア(小売事業者による広告ビジネス)だった。

 イギリスの広告代理店、グループエムによると、世界のリテールメディア広告市場は2023年に1257億ドルに達した。2028年にはテレビ広告の市場規模を上回るとみられている。

 ファミマは日本でも消費者と多くの接点を持つ小売店がメディアになると考え、2021年にかけて新会社を立ち上げた。デジタルサイネージの設置や映像コンテンツ制作を担う会社、ファミマの決済データや提携先のデータを基にターゲティング広告を行う会社も設立している。

 一部地域の実証実験を経て、近年は本格的にサイネージ設置などの投資を進めている。これまでに、広告関連事業に累計450億円以上投じてきた。

 当初、競合関係者からは「自社商品やサービスの宣伝ばかり」「本当に儲かっているのか」と冷ややかに見られていた。実際、立ち上げ期は広告の入稿が少なく、広告事業を担う子会社は赤字が続いた。官報の決算公告によると、関係子会社3社の最終損益の合計は2022年2月期で18億円の赤字、2023年2月期も15億円近くの赤字だった。