ホンダ・日産・三菱自連合の誕生で王者トヨタと2強体制が鮮明に、「弱者連合」の揶揄を跳ね返せるか

AI要約

ホンダ・日産の新連合が三菱自動車の合流と共に具体化し、次世代車両向けの技術共同研究や部品共通化に合意し、2030年代の競争に備える。

最初に提携を検討した3月の会見からわずか4カ月で実現し、日経新聞の自動車関連記事も出現。8月1日の会見で具体的な協力内容が明らかにされた。

ホンダ・日産両社の合意が知能化と電動化への対応を強化し、協業の成果を示す一方、三菱自の加入により、国内自動車業界の構図が大きく変化する。

ホンダ・日産・三菱自連合の誕生で王者トヨタと2強体制が鮮明に、「弱者連合」の揶揄を跳ね返せるか

● ホンダ・日産の提携が具体化 三菱自の合流も発表

 ホンダ・日産・三菱自の新連合が、いよいよこの8月から始動することになった。

 8月1日、ホンダの三部敏宏社長と日産自動車の内田誠社長は共同で記者会見を行い、次世代ソフト・デファインド・ビークル(SDV)向けプラットフォームの領域において、基礎的要素技術の共同研究契約を締結したことを発表した。また、EVバッテリーなどの基幹部品の共通化や車両の相互補完を進めていくことにも合意した。

 加えて、このホンダ・日産連合に三菱自動車工業が新たに参画する覚書を同日締結したことも発表した。これにより、ホンダと日産に三菱自が加わった新連合で、競争が激化する2030年代以降の生き残りを目指すことになる。

 そもそも、この新連合の動きは、今春3月15日にホンダ・日産の両社長が臨んだ会見で「電動化・知能化時代に向けた戦略的パートナーシップの検討開始」を発表したのが始まりだった。この時点では、両社の提携の意向が明らかになっただけで、「電動化・知能化に向けて協業の可能性を探る」狙いから検討していくと述べたものの、具体的な中身はなかった。

 ただし、あえてホンダと日産のトップがそろって「協業検討」を発表したことには大きな意味があり、この3月の会見内容について筆者は『日産・ホンダ連合誕生で「業界再編」必至!サプライヤー、日仏連合…全てが激変する』とのタイトルで3月20日に記事を公開している。この記事で筆者は、「日産が約34%出資する三菱自が合流し3社新連合が誕生することで、トヨタ連合の対抗軸として国内は2陣営に集約されるのか、ということも注目のポイントだ」と記述している。

 それから4カ月、ホンダ・日産両社の技術陣現場による「100day SPRINT」(100日間協議)を経て、車載ソフト、基幹部品、電池の全面協業や車両相互補完にまで合意し、驚くべきスピードで今回のトップ会見にこぎ着けた。さらに、三菱自の合流も正式に発表したことで、「トヨタ連合」(トヨタ自動車・スズキ・マツダ・SUBARU・いすゞ自動車・ダイハツ工業・日野自動車)対「ホンダ・日産・三菱自連合」という新たな国内自動車業界構図が鮮明となった。

 ちなみに、実は8月1日の両社長会見に先立ち、7月末には異例の出来事があった。

 それは、日本経済新聞が7月26日(金)と27日(土)、日曜日を挟んだ29日(月)の1面トップで、連続して自動車業界マターの記事を掲載したのだ。26日付が「ホンダ、中国生産3割減 日野はエンジン撤退 EV攻勢受け不振」、27日付が「トヨタ、九州にEV供給網 福岡に電池新工場」、29日付が「三菱自、ホンダ・日産と合流 協議開始、車載ソフト共通化 トヨタと2陣営に」という見出しだった。

 日経の1面トップ記事で自動車関連が実質“3連チャン”というのは、いかに自動車が日本経済の大黒柱といえども珍しいケースである。いずれも8月1日のホンダ・日産の会見につながるもので、象徴的な動きといえよう。

● 8月1日は自動車業界にとって 歴史的な一日となるのか

 初めて提携検討を公表した3月の会見では「まだ、その段階ではない」と握手を拒んだホンダ・日産両社長だったが、今回の会見ではにこやかに握手を交わした。100日間協議の成果として、車載ソフトやEV部品共通化で合意したこと、さらに目玉として次世代SDVの共同開発にまで踏み込めたことが大きいだろう。「知能化・電動化に対応できないと、淘汰(とうた)される」(ホンダ・三部社長)、「文化の違いがあっても危機感と目的の共有化でウィン・ウィンに」(日産・内田社長)という共通意識が、踏み込んだ協業を生んだといえる。